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『剣遊記[』

第六章 女戦士は元に還れる夢を見るか。

     (5)

 とにかくこれにて、和解(?)が成立。ただし入浴と言う単語が耳に入れば、この男がしゃしゃり出るに決まっていた。

 

 そのサングラス😎男は孝治を突然、うしろからガバッと羽交い絞めにしてくれた。

 

「てめえっ! 孝治っ! 貴様は性転換体質ばええことに、女風呂に混浴しよったとねぇ! そげな悪行はこんオレがずえったいに許さんけねぇ! ほんなこつうらやましかぁーーっ!」

 

 などとついには、訳のわからない怒りと本音までもぶち撒けてくれる始末。

 

「ちゃ、ちゃいますって、先輩っ! おれはあんとき、清美さんから無理矢理引っ張り込まれてしもうて! 先輩かて現場ば見たでしょ……うわっち! 覚えてなかっちゃですよねぇ☠」

 

 孝治は慌てて、荒生田に言い訳をつくろった。だけど、混浴の張本人である清美は、子分の徳力といっしょにとっくの昔、孝治と荒生田の視界から消えていた。

 

「うわっち! あいつら逃げちょうばい!」

 

 もはやパニックの孝治に、荒生田は情けも容赦もなかった。

 

「なん言いよんねぇ! オレはそげなん知らんけねぇ! とにかく成敗や成敗っ!」

 

「うわっちぃーーっ!」

 

 荒生田のいう『成敗』とは、もちろん○×○×なこと。孝治の悲鳴が、またもや木霊となって、阿蘇山周辺に反響した。

 

 うわっちぃーーっ! うわっちぃーーっ! うわっちぃーーっ!

 

「またいつものパターンちゃねぇ☢」

 

『よかやない☻ みんなほんとは、こん騒ぎば楽しんじょるとやけ☺』

 

 いつまでも続くお馬鹿な騒動に、友美も涼子も、今や放任の顔丸出し。おまけに三枝子もつぶやいていた。

 

「まっ、これでお互い様っちゅうとこやね☺ なんかちょっと可哀想な気もするばってん……うちに大事なことば隠した、これも天罰ばいね✌」

 

 自分自身も大事な秘密を隠しているくせに、それは完全なる棚の上。三枝子は本物の笑顔に戻って、いまだ馬鹿騒ぎに戯れている孝治たちを見つめ続けていた。


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