『剣遊記[』 第六章 女戦士は元に還れる夢を見るか。 (3) 「ねえーーっ! 先輩たちぃーーっ!」
そんなところへ、サイクロプスが森の奥へと消え、これで安全と判断したのだろう。裕志と友美がいっしょになって、高台から駆け下りてきた。
やっぱりついでだけど、もちろん涼子も同伴。
「みんな無事で良かったっちゃよ☆ ぼく、一時はどげんなるとやろっかっち、心配しちゃったですけ☺」
今ごろぬけぬけと、笑顔でほざく裕志であった。当然荒生田が、このような後輩を許すはずがなかった。
「てめえっ! オレたちがサイクロプスにケンカば売りよったときに、なしてオレといっしょに来んかったとやあーーっ! さてはビビったっちゃねぇ!」
サングラス😎の奥の三白眼が、ギロリと裕志をにらんでいた。
これに先輩との長い付き合いからであろう。すぐに後輩魔術師が、危険を敏感に感じ取った様子の狼狽ぶり。
「い、いや……ぼくは上んほうから魔術で援護ばしようっち思いよたっとですけどぉ……やきー絶対怖かったわけやありましぇん……♋」
慌てて言い訳を並べているが、やっぱり後の祭り。
「しゃあーーしぃーーったぁーーい! 先輩様からの愛のお仕置きじゃあーーっ! しばくぞきさぁーーん!」
「あひぇーーっ!」
ここでも荒生田から四の字固めを仕掛けられ、裕志の絶叫が、阿蘇周辺の山々に木霊した。
あひぇーーっ! あひぇーーっ! あひぇーーっ!
「ちぇっ! しょーもな☠」
清美はこのふたりの戯れを、ほとんど呆れ果ての瞳で眺めていた。だけどこのおかげで、清美からの追及を免れた格好である三枝子は、ほっとひと息の顔でいた。これで残るは、いまだに立腹気味の孝治だけとなった。
三枝子はここで、孝治相手に先制を行なった。
「そげん言うたら孝治さん、あなたは以前、フェニックスん血ば求めとったとですよねぇ☛☞」 (C)2013 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |