『剣遊記[』 第六章 女戦士は元に還れる夢を見るか。 (2) 「戦意喪失……っちゅうわけっちゃね☹♋」
なんだか肩透かしの思いで、孝治はつぶやいた。これに三枝子が、なぜか率先的になって説明をしてくれた。
「まあ、こんサイクロプスにしてみたら、いつもんどおり人間いじめばしよったところにうち……やのうてフェニックスが来てしもうてこっ酷い目に遭わされたもんやけ、すっかり弱気になったみたいばいねぇ☻ うちが思うに、たぶんこれで、当分里まで下りてこんっち思うわ✌♪」
孝治は口をポカンと開けた。
「はあ……?」
「なんか、てめえの手柄みてえな言い方しようばってん、だいたいフェニックスとサイクロプスが戦いよったとき、あたはどこ行っとったとね?」
「あっ……そ、それはぁ……♋」
孝治はよくわからなかったが、三枝子はつい調子に乗って、しゃべり過ぎたようである。その大事な部分を清美から突っ込まれ、三枝子の額に汗が流れだした。
「お、おう、そうっちゃ! おれもそこが訊きたか! おれにヒナば渡してくれたあと、いったいどこ行ったっちゃね?」
孝治もここぞと、三枝子を問い詰めた。それも納得のいく理由ば聞かんと、絶対に承知せんばい――といった迫力でもって。
「あ……そ……それはやねぇ……☁」
三枝子は見事にあせっているようだった。ここまで孝治にはわかりようはないが、実はうちがフェニックスになって、サイクロプスと戦ったとよ――なんて、言えるはずがないからだ。
これはまた、フェニックスとの固い約束でもあるのだ。
しかし、ここで上手な言い訳ができるほど、何度も繰り返すが、三枝子の口は達者ではない。彼女はこれからも、今回と同じような話の展開が起こったとき、このような窮地に陥るのだろうか。 (C)2013 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |