『剣遊記15』 第七章 日本に向かって宜候{よーそろー}! (6) 「あ〜あ、やっちゃったばい……☢」
逆ギレをする美奈子自体であれば、孝治にとっても、それほど珍しい事態ではなかった。ただ、あれほどひと目惚れの態度を見せつけておいて、それが当の本人(蟹礼座)の前でこれほどの本性をあらわしてくれようとは、さすがの孝治(?)も想定外の外の外の外的な出来事だったのだ。
さらに大きな掛け声とともに、美奈子が右手を大きく振り上げた。
「もう、こないなったらなんもかも面倒くさ、のひと言っちゅうもんやぁ!☠☀ ほな、行きまっせぇーーっ!」
「あかん! 全員退避やぁーーっ!」
同時に千秋も大声を上げ、孝治の右手をガシッと、自分の左手で握ってくれた。
「うわっち!?」
孝治はこれからいったいなにが起こるのか。それがよくわからないまま、とにかく千秋から強引に引っ張られる格好。
「うわっち! うわっち! なんが起こるっちゅうとやぁーーっ!」
「やかましいわい!!」
千秋は孝治の悲鳴に答えないまま、最後の部屋――中くらいの広間から飛び出した。もちろんあとから、友美と千夏、ついでに涼子も追ってきた。秋恵など、丸いジャンボカボチャ大であるピンクボールのままゴロゴロと転がって、孝治たちに続いていた。
孝治は訳もわからず逃げながら、もう一度千秋に尋ねた。
「いったいなんが起きるっちゅうとやぁ! 美奈子さんがいったい、なんするっちゅうとねぇ!」
「そりゃ史上最大の大パニックやでぇーーっ!」
ようやくの感じで、千秋がそれらしい事態の展開を答えてくれた。孝治の右腕をつかんだまま、うしろに振り返りもしないで。
「師匠の怒り、大爆発やぁーーっ! なんちゅうこと今まで仰山あったんやけど、きょうのは飛び切りの決定版やでぇ!」
「けっていばん!?」
実体はよくわからないのだが、千秋の迫力だけで、孝治にもだいたいのイメージがつかめるような気がしてきた。
「なんか、そげな気がしてきたばい☠」
などとほざいている最中に、後方の部屋からドッカァーーンといった衝撃音と、まるで風速七十五メートル級の大爆風が、逃げる孝治たちに襲いかかってきた。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |