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『剣遊記15』

第七章 日本に向かって宜候{よーそろー}!

     (2)

 ドカンと孝治は扉に激突!

 

「うわっち!」

 

 他愛もなく頑丈な扉に、バシーーンと跳ね返される結果となった。

 

「痛ちちちちちちっ!」

 

 そのままの反動で、廊下に落下。盛大なる尻餅をついた。

 

「ネーちゃん、なん考えとんのや? どない見たかて鉄製の扉に生身の人間が体当たりしたかて、そりゃ無駄言うもんやろ⛑⚠

 

「しゃーーしぃーーったい!♨」

 

 けっきょく大失敗をしでかした格好の孝治は、千秋から恒例の有り難い小言をいただく破目となった。すると孝治に続くつもりなのか、今度はジャンボカボチャ大のボールになっている秋恵が、自分からピョーーンと弾んで、そのまま扉にペッタリと貼り付いた。

 

 なんだか扉に、桃色の円盤型タペストリーが、くっ付いたような感じである。

 

『秋恵ちゃん、なんする気やろっか?』

 

 この一部始終を観客気分で眺めているであろう涼子が、扉にくっ付いているピンク色の円盤型タペストリーを、近くまで寄ってマジマジと見つめていた。

 

『あっ、動いてる☞』

 

「うわっち?」

 

 続いて孝治も、貼り付いているピンクの円盤に瞳を向けた。友美も同じくで。

 

 見ればなんだか、ピンクの円盤型タペストリーの真ん中あたりが、生き物のようにモゾモゾと蠢いていた。ぶっちゃけ生き物ではあるが。

 

「秋恵ちゃん、なんしよんやろっか?」

 

「さあ?」

 

 疑問と不思議満載である、孝治と友美が眺める前だった(もちろん他のメンバー全員も眺めていた)。扉がガチャリと、部屋の内側向けに、急に開いたではないか。

 

「うわっち!」

 

 孝治は仰天したが、開いた扉の両ドアには、まだ秋恵変身であるピンクタペストリーが貼り付いたまま。両側から引っ張られる格好となっていた。

 

「わかった!☆」

 

 ここで友美が、両手をいきなりパチンと打った。孝治もすぐに顔を向けた。

 

「うわっち! な、なんがわかったとや?」

 

 友美がニコリと微笑んだ。

 

「秋恵ちゃん、自分の体の一部ばドアの鍵穴に差し込んで合鍵に変形ばさせて、それで鍵を開錠させたんばい☀ これやったら孝治の飛び蹴りよか、よっぽど効果があるってもんやけ✌」

 

「悪かったっちゃね、効果がのうて☹」

 

 孝治としては、大いにおもしろくない気分となった。この一方で美奈子は、魔術師の職業柄なのか、大いに感心している様子っぷり。

 

「なにはともあれ、さすがは秋恵はんどすなぁ まさに身を挺した、『開錠の術』ってもんでおますわ✌」


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