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『剣遊記15』

第七章 日本に向かって宜候{よーそろー}!

     (11)

「ほな、頼むで、おっちゃん☻♡」

 

「おっちゃんじゃのうて、わしゃまだおにいちゃんなんじゃがのぉ♋」

 

 後日、南西諸島の某無人島にある恐竜ランドに、ひとりの新人飼育員が就職をして配置された。言うまでもなく孝治の紹介による、ここが蟹礼座氏の新しい職場である。

 

「さすがに恐竜の糞というやつは、噂どおりにいなげなほどおおけーのぉ♋」

 

 などとブツブツほざきながら、草食恐竜エリアに散らばっている巨大な糞の塊を、蟹礼座はスコップひとつで、丁寧に拾い集めて回った。まあ、どこの動物園でも新人の仕事は、たいがい動物の糞の後始末から始まるものである。

 

「あのオレンジビキニのネーちゃんも、ええときにアルバイトを紹介してくれたもんやで♡ こちとら実際、人手が足りんでよう困っとったさかいになぁ

 

 添乗員兼ランドの事務的責任者であるガイドさんは、あの大型帆船――ラブラドール・レトリーバー号が行ってしまった先の水平線に向けて、それこそ神に感謝をするように、両手のシワとシワを合わせ続けていた。

 

「贅沢言える立場じゃねえが、ほんまにいなげなとこ紹介してくれたもんじゃのぉ☠」

 

 蟹礼座氏も同様に、水平線の彼方を見つめ続けていた。もっともこちらは、少々の恨み節も含めてではあるけど。


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