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『剣遊記超現代編T』

第五章 これからの未来、わかってないけどやめられない。

     (9)

 ついに元孝治たち四人の写真集が発売された。これは関係者全員の一致した予想のとおり、まさにクリーンヒットと言うべき大当たり――ベストセラーとなった。

 

 なにしろ現役の女流漫画家が、初めての水着の公開――を飛び越え、なんとヌードまで発表したのである。しかもそれがけっこう可愛い四つ子の美人姉妹ともなれば、まさに世界中の話題を独占。空前絶後の注目度も当然であろう。

 

 未来出版はこの成功を祝って、早くも祝賀ムードが最高潮。早々に大ヒット記念のパーティーが、以前に五百万部達成の際にも使われた高級ホテルにて再び開催された。

 

「本業の漫画以外でこげん大騒ぎになって、ほんなこつええとやろっか?」

 

 大ヒットの主役であるにも関わらず、パーティーの席でワイングラスを右手に持つ孝江は、複雑怪奇な思いで胸がいっぱいだった。おまけに今回のパーティーの席ではなんと、元孝治たち四人全員、それぞれ赤、青、緑、黄色のドレス姿でいるのだ。

 

 謎の性転換からかなり長い月日が経っているとはいえ、人間の精神の順応力、まさに恐るべし――としか言いようがないのかも。

 

 ちなみにドレスが色違いの理由は、単に四人の外見上の区別が無さ過ぎなので、誰もが一発でわかりやすいようにしただけ。赤は孝江の専売特許(?)であり、青が孝乃、緑が治花、黄色が治代となっている。

 

 あとで聞いた話によると、これらの無地一色型ドレスを希望選択して用意させた者も、写真家の中原であったという。

 

 ビキニと言いドレスと言い、どこまでも無地の原色にこだわる写真家とは言えないだろうか。

 

 でもって赤のドレスを着用している孝江は、さらにため息混じりでつぶやいたりする。

 

「あたしもとうとうここまで来てしまったっちゃけど、我ながらまるでフランス人形ばいねぇ☠ 親が知ったら嘆くばい、きっと☃」

 

 それからグルリと会場内を見回せば、前回のパーティーのときと、まったく同じ。会場の四箇所に黒山の人だかりができていて、それぞれの中心に元孝治たち四人が配置されている格好。

 

 しかもその規模は前回よりも、さらに三倍以上は人数がふくらんでいる感じがしていた。また会場の中にはもちろん、友美と涼子、それにアシスタントの四人衆も参加。もっともこの人だかりでは全員がその中にまぎれてしまい、ちょっと声をかけようにも、それこそ人跡未踏のジャングルの中で、竹の子一本を探すような苦労が必要であろう。

 

「これじゃ打ち合わせどおり、四人集まることができるとやろっかねぇ?」

 

 このような会場の熱い空気を眺め、孝江は深いため息を吐き続けた。そこへまさにのこのこと言うべき、今回の悪役が登場した。

 

 荒生田和志と付録の牧山である。


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