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『剣遊記超現代編T』

第五章 これからの未来、わかってないけどやめられない。

     (10)

 その荒生田が、これまたヌケヌケと言ってくれた。

 

「やあ、写真集の大ヒット、おめでとう♪✌ まさしくオレ……じゃないボクの目に狂いはなかったよ 君たちを自分自身の美に開眼させて、本当に良かったと思う☀

 

(よう言うばい こんインチキ野郎♐

 

 孝江の心のセリフはともかく、荒生田の登場が、ある意味行動の始まりとなった。それぞれ会場の四箇所に分かれ、ドレス姿で来客たちに応対していた孝江以外の元孝治たちが、荒生田の前に集まってきた。

 

 次々と挨拶に現われる男たちの、少しだが垣間見えるスケベそうな手を振り切って。

 

 実際、かなり困難と思っていた四人の合流であったが、それは取り越し苦労であったようだ。意外にスムースなスピードで、元孝治たち四人は会場の一角に集結した。

 

「どうも、このたびはいろいろとしてもろうて、感謝いたします☻」

 

 とにかく元孝治たち四人が顔をそろえたところで、治花が心にも無いお礼の言葉を述べた。その瞳は決して微笑んではいないのだが、今の時点において荒生田とそれから牧山は、まだ気づいている感じではまったくなかった。それよりもこの場はまさに、荒生田と牧山を囲んで、ドレス姿の四人が優雅な姿を見せているの図。これを端から見ている他の来客たちは、今回の写真集の一番の功労者が、モデルたちから感謝をされている――そんな風にしか思わないであろう。

 

 まあ、周りからの視線は、この際置いておく。それよりも美女(難あり☠)四人に囲まれ、荒生田自身は今や有頂天の極みにある模様。おまけに少々の酔いも回っているのだろうか。口だけはスラスラと、絶好調に回りまくっていた。

 

「これで君たちも、漫画の腕以外でも有名タレントになって大いに明るい未来像が描かれたわけだし、前途はまさに有望株と言ったところだろうねぇ☀ とにかく君たちはボクを信じて、黙ってついてくれば正解だよ♡ もう漫画家なんて、割に合わない仕事なんかやめてさぁ

 

 この発言には正直、孝江も孝乃も治花も治代も、全員カチンときた。なんだかまるで、自分たちの存在意義を、真っ向から否定されたような気になったからだ。

 

 また今の荒生田発言で、四人の頭からはもう、遠慮も慈悲の気持ちも、完全に消え失せた。とにかくこれで迷うことなく、一番肝心な本題に入れる話の展開となったわけ。

 

 ここで初めの打ち合わせどおり、孝江が先頭になって、荒生田に尋ねてみた。

 

「あっ、それから中原先生らとの写真集に載せる写真選びのとき、使わなかった写真の内の何枚かが、なぜかなくなってるって先生が言いよったとですけど、荒生田さんは知りませんけ?」


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