『剣遊記超現代編T』 第五章 これからの未来、わかってないけどやめられない。 (7) 同時刻、某喫茶店の店内――とは言っても、ここは以前にも登場した、荒生田たちが常連にしている店。ただしきょうに限ってはメンバーに中原は入っておらず、荒生田と牧山の、ふたりだけとなっていた。
もちろん貸し切りのはずがないので、他にも客はちらほらといた。もっともその程度の状況など、誰もおかしいとは思わないだろうけど。
「え〜〜、これが中原先生のスタッフに頼んで秘密に頂いた、今回の写真集に使わない鞘ヶ谷先生たちのヌード写真です☹ 全部で五十枚ほど✄ ほんとはもっと三百枚くらいあるそうなんですけど、先生の目を盗んで手に入れるのは、これが精いっぱいだったそうで⛔」
奥のテーブルに陣取っている、荒生田と牧山のふたり。そのテーブルの上には、元孝治たち四人の見事な裸身が写っている写真が、文字どおり所狭しと並べられていた。
「いやあ、上出来、上出来♡☻ しかしなんかもったいない話やねぇ☻」
全作品の中のほんの一部だけとはいえ、荒生田はこれで満足顔になっていた。それもそのはず。テーブルの上に並ぶ元孝治たち四人のオールヌードは、どれもが見事なプロポーションばかり。むしろ荒生田の疑問はこれだけの美体を持っていながら、なぜ彼女たちはプロのモデルにはならず、漫画家を生業にし続けるのかにあった。
だがそれは、小さな愚問でしかないだろう。実際に鞘ヶ谷先生たちが脱いでくれたおかげで、本人たちの本心はとにかくとして、こうして見事な芸術品が出来上がったのであるからして。
「で、どうすんです? この写真☛ どうやって販売するんですか?」
ここで改めて湧いてきた疑問を、牧山は荒生田に尋ねてみた。
荒生田はニヤリと前歯を光らせた。
「もう販売ルートは確保済みだからな☻ さすがに国内はヤバいから、まずは韓国、中国経由、さらにアメリカの知人にもルートを頼んであるから、おまえはもっと、中原の写真を集めてこい☞」
「はいはい……♋」
正直言って、牧山はうんざり気分が、顔面あらわとなっていた。だが有頂天になりかけている荒生田には、それこそ『知ったことか✋』の世界。どうやら彼の胸の中では、次から次へと入ってくる臨時ボーナスの山で、期待が大きくふくらんでいるようだ。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |