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『剣遊記超現代編T』

第五章 これからの未来、わかってないけどやめられない。

     (5)

 あの苦難の連続だった撮影の日々から、早くも三週間。元孝治たち四人は、次の日から本業である漫画家に戻り、毎日連載の執筆に明け暮れていた。

 

 それでも写真集を編集部とカメラマンに任せっきりにして、まったくのノータッチ――と言うわけでもなかった。時折未来出版の本社にまで呼ばれ、アシスタントの面々も交えて、出来上がった写真のどれを掲載するのか、大いに議論をしたものである。

 

 なんでも写真集の内容は、どうやら水着が九割、ヌードが一割の比率となるらしい。

 

「すっごい苦労した割には、ヌードはあくまでも隠し球っちゅうことやね☠☻ おれ……やないあたしたちの苦労は、これで報われるとやろっか?」

 

 比率の話を最初に聞いたとき、孝乃は思わずの気持ちでつぶやいた。

 

「まっ、これが企業戦略っちゅうやつやね✌

 

 おまけで治代も、自嘲気味にささやいていた。

 

 また、その際に撮影した元孝治たち四人のヌード写真も、選定のための当事者特権で、アシスタントたち四人にも拝見ができていた。おかげで和布刈と井堀のふたりなどはまさに、いまだ興奮冷めやらぬの心境下にあった。

 

「おいっ!」

 

 きょうもきょうとてスタジオにて仕事中、心ここにあらずの顔でニヤけている和布刈の頭に、先輩である砂津からのペンが飛んできた。

 

「痛っ!」

 

 ペン先は見事、和布刈の脳天に命中した。砂津が怒鳴った。

 

「もう三週間も前のこと、いつまで夢に見てんだよ♨ いい加減に頭を切り替えねえと、締め切りが守れねえで休載になっちまうじゃねえかよ♨♨」

 

「す、すみません……☁」

 

 一応すなおに謝りながら、ついでに和布刈は、専用の机で執筆中である元孝治たち四人に、チラリと目を向けてみた。このとき実は、井堀も同じ行動をしていた。

 

「おれたちもそうだけど……先生たちも浮き足立ってんなぁ

 

「無理ないっすよ

 

 井堀がそっとささやいた。

 

「なんだかんだ言っても、写真集の発売がもうすぐなんですから、初めて自分たちのヌードが全国に見られてしまうわけなんで、その気持ち、男のおれでもなんとなくわかる気がしますよ♐」

 

 実際井堀の言うとおり。原稿を描いている最中でありながら、孝江も孝乃も治花も治代も、どこか上の空である自分たちを自覚せざるをえない心境下にあるのだ。

 

 しかし実を言えば、発売とは違う次元の話において。


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