『剣遊記超現代編T』 第五章 これからの未来、わかってないけどやめられない。 (3) 「やべっ!」
治花を始め、四人はまだ着衣の真っ最中。先ほどからの話のとおり、現在の研修寮は専門の寮母さん(現在、食事の準備中)を除いて、滞在者はほとんど男性ばかり。たった六人しかいない女性は全員この部屋に集合しているので、訪問者は間違いなく男性である。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
慌てて友美が応対をしてくれた。この間に元孝治たち四人は、とにかく大急ぎで涼子にも手伝ってもらいながら、なんとか着衣を間に合わせた。
「ど、どうぞ……♋」
危機一髪をどうにか回避した状況を確認して、友美がそっとドアを開いた。
「あっ、中原先生……♋」
友美の瞳が丸くなるのも、当然と言えば当然。ドアの外の通路には、カメラマンの中原が立っていた。それも大きめのビニールレジ袋に温かい六本の缶コーヒーを入れ、右手で少し重たそうにして持っていたのだ。
とにかく着替えを終わらせた孝江が、自分も瞳を真ん丸にした気分で尋ねてみた。
「せ、先生……いったいどげんしたとですか? なにかまた、撮影の続きでも……☢」
実は四人とも、この展開を一番恐れていた。だが中原は、撮影中とは全然違う、おだやかそうな笑みで答えてくれた。
「いや、おれとしては一応満足した☀ おかげでベストな写真集が出来上がりそうだよ✌ これは少な過ぎるとは思うが、おれからのほんのお礼で、とにかくコーヒーを飲んで、ゆっくり疲れを取ってくれたまえ☕」
「あ、ありがとうございます……♋」
撮影中のド迫力と比べて、まるでジキルとハイドのような豹変ぶり。真正面に立っている孝江はもちろん、うしろに並ぶ孝乃、治花、治代。さらに涼子までもが、口をポカンと開くしかなかった。
「じゃあおれは、このあと撮影終了の打ち上げ会の準備があるから、君たちも五時になったら食堂のほうに来てくれよ☞」
唯一の女性陣六人を呆気の気持ちに陥らせてから、中原はそれだけを言い残し、さっさと部屋から退出していった。
部屋にはカメラマンが置いていった、六本の缶コーヒーだけが残されていた。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |