『剣遊記超現代編T』 第五章 これからの未来、わかってないけどやめられない。 (22) 日本の上空七千メートル。瀬戸内海の星空を、万願の女神ミーナとふたりの弟子――チアとチナが飛行していた。
三人とも、飛行に必要な装備など、まったくなし。魔術だけでの、完全無防備滑空の姿である。
なお、彼女たちの目的は――特になし。
ただ単に、西の方向へと飛行しているだけ。
その魔術飛行の最中である。チナが眼下に広がる夜景(瀬戸内海沿岸の工業地帯)を眺めながらで、師匠のミーナに顔を向けた。
『ミーナちゃぁぁん♡ チナちゃんたち、これからどこに行きますんですかぁ?』
ミーナが答えた。瞳をまっすぐ、前方だけに向けて。魔術の力で、前からの向かい風など関係ないのだ。
『そうどすなぁ……あえて言うなら、この万願の女神でおますミーナの行く先全部が、うちらの目的地でおますんや♐ 東に困っておます人あらばそこへ駆けつけ、西に泣いてはるお人がおったなら、一目散に飛んでなぐさめてあげはるのが、うちらの使命であり役割でおますんやで✈ ほな、そういうことで、もっとスピードを上げまっせぇ☞☛☞』
『はいですうぅぅぅ☀☀☀』
今の言葉が返答なのかどうか、他人から見れば、甚だ疑問であろう。しかしチナは、力いっぱいに満足したようである。師匠のミーナにならって、自分自身もさらに魔術による飛行速度を上昇させたのだから。
最後に師匠とチナの会話中、黙って聞いているだけにしていたチアが、前方からの空気抵抗に負けないような、けっこう大きめの声を上げていた。
『そない言うたら、女ん子にしてやったあの漫画家先生、あんじょううもうやりようやろうなぁ♠♣ まあ案じるより産むがやすし⛑ なんやかんや言うても、万事幸せにやりようやろうなぁ♪☺』
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