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『剣遊記 超現代編U』

第一章  工業高校、激震走る!

     (1)

 ある日、おれ(和布刈秀正{めかり ひでまさ})は、二度ビックリした。

 

 おれはとある某高校――などともったいぶらずにきちんと校名を言うが、港南{こうなん}工業高校2年B組の一生徒である。それがその日、珍しくも転校生が入ってきた――と、初めはふつうにそう考えた。

 

 一度目のビックリは、その転校生が女子だったと言うことだ。

 

 工業高校と言えばふつう、生徒はほとんどの場合、男子のヤローばかりが常。決して男のみの世界で女人禁制などと言う時代錯誤な場所ではないのだが、いかんせんモテない野郎どもの巣窟なのは間違いなし。だから表向きは男女共学も有り得るのだけど、世間一般のほとんどの女子からは、見事に敬遠されているような学校なのだ。

 

 その常識(?)を覆{くつがえ}して、我が校にもついに花が咲いた――かと、おれは初めはそう思った。この次の、先生の説明を聞くまでは。

 

 我がB組の担任である帆柱{ほばしら}先生の右横で黒板の前に立つその子は、実に可愛らしい女の子だった。

 

 少し長めに伸ばしている黒髪が両肩までかかって、それが見事にセクシーっぽい。着ている制服は、我が校の近所にある、香蘭{こうらん}女子高(紫基調のブレザー風に、タータンチェックのスカート。これがミニ)みたいだが、あとで聞いた話によれば、我が校に女子専用の学生服が無かったので、急きょその香蘭女子高に頼んで、ひとり分の制服を取り寄せてもらったと言う。

 

 このときなにも知らなかったおれは、単純によく似合ってる――と思っていた程度だった。また彼女の瞳もパッチリと愛らしく、なにやら恥ずかし気にモジモジとうつむいている姿勢が、まさにおれの『守ってあげたい』本能を、大いに刺激してくれた。

 

 そして二度目のビックリは、教室の教壇――黒板の前に先生の紹介で立つ、その女の子の素性について――だった。

 

 帆柱先生が、はっきりと言ってくれた。

 

「みんなも驚いてるかと思うが、実は僕も非常に驚いてる♋ 今、ここにこうしている女子生徒は転校生ではなく、君たちとつい先月までいっしょに勉強をしていたクラスメートの鞘ヶ谷孝治{さやがたに こうじ}なんだ☺✊ 長い間交通事故の巻き添えで入院してたんだが、退院直前に、突然こうなったそうなんだ

 

「ええーーっ!」

 

 おれももちろんだが、クラス全員の超驚き声が、全校の隅から隅まで木霊した。


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