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『剣遊記超現代編T』

第五章 これからの未来、わかってないけどやめられない。

     (11)

「ぎくっ!」

 

 とたんになぜか、荒生田の舌が止まったりする。おまけになぜか、サングラス越しに見えている額から、じんわりと汗までが流れ出していた。

 

「やあ、役者が全員そろってるようだがね」

 

 そこへ未来出版社長兼少年ビクトリー編集長である、黒崎氏までが登場。彼はニコやか笑顔で、荒生田の右肩を、自分の左手で軽くパンと叩いたりした。

 

「いやあ、君の言ったとおりだがね。まさか僕も、漫画家先生の写真集が、たとえモデルが逸材であったとしても、めちゃんこどえりゃーほど売れるとは思わなかったもんだがや」

 

 まさにこれ以上はないほどの持ち上げぶり。そんな黒崎の両脇には、友美と涼子のふたりが、まるで助さん格さんのように付き従っていた。別に社長が水戸黄門――というわけでもないのだが。さらにおまけで言うと、孝治のアシスタントたち四人も、いつの間にかこの場に集まっていた。こちらもうっかり八兵衛風車の弥七――というわけではないだろうに。

 

 ところが荒生田のほうときたら、黒崎のお誉めの言葉が、まるで耳に入っていない感じ。黒いサングラスをかけていても外見からはっきりとわかるほど、顔面蒼白が丸見えとなっていた。


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