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『剣遊記W』

第七章 ワイバーン騒動後始末。

     (9)

 明朝、ワイバーンが大暴れをして、物の見事に全壊状態となった悪徳酒場。ようやく重い腰を上げた地元の衛兵隊による、現場の実況見分が行なわれていた。

 

 孝治はそんな物々しく、また、ほぼ廃墟と化している酒場に、鼻高々の気持ちで舞い戻っていた。

 

 他にも友美と涼子。ついでに裕志と、左のほっぺたが腫れている荒生田が続いていた。

 

 現場の状況を書類にまとめている最中の衛兵に、孝治は手柄を自慢したい気分で話しかけてみた。衛兵が忙しそうにしている様子など、まったく気にもしないで。

 

「ねえ、凄かっちゃでしょ これ、おれたちがやったんやけ✌」

 

「ああ……そうながや✍」

 

 当然の話であろう。孝治に対する衛兵の態度は、ありがた迷惑の色がありあり。さらに、おまんらがなんもせんかったら、こんな面倒な事件を掘り起こさんで済んだやか――とでも言いたげな感じもしていた。

 

「おまんらのおかげで、この店が人身売買その他なんかもやりよった事実もわかったんぜよ☠ だからあとは、わしんくらに任せて帰ってくれや☃」

 

「人身売買その他……そんだけね?」

 

 あからさまに感じの悪い衛兵の対応ぶりに、孝治は思いっきりムカついた。

 

自分自身の横着ぶりは棚に上げて。

 

だがそのついで、一番大事な件を見逃しているような衛兵の言い方にも、孝治は大きな疑問を感じていた。しかし、孝治のそのような思いなど、それこそ衛兵の知るところではないのだろう。

 

「これだけぜよ☢ 解放された娘っこたちの証言で、この店がやりよったボッタクリ行為に人身売買、違法賭博に食品偽装労働法違反なんかが全部、白日のもとに暴かれたんやからな✄ これだけあれば『そんだけ』とは言えんやろ♐」

 

「あのぉ……☁」

 

 淡々と言葉を並べてくれるだけの衛兵に、孝治は今度は、恐る恐るの気持ちで尋ねてみた。自分が一番知りたい、肝心な話の顛末を。

 

「……麻薬っとか、出ませんでした?」

 

 これにも衛兵は、実に面倒臭そうに答えてくれた。

 

「麻薬ぅ? そんなぼっこうなモン、ねえぜよ★」

 

「そ、そげなぁーーっ!」

 

 孝治はひと言、大声で叫んだ。それから衛兵の前より、大急ぎで駆け出した。例の白い粉末の詰まった袋を積んだ馬車のある、店の中庭へと。


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