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『剣遊記W』

第七章 ワイバーン騒動後始末。

     (2)

 ひとりポツンと残された荒生田は、呆れるやら自慢話を聞かせる矛先を失うやら。とにかくやり場をなくした気持ちでいっぱいになっていた。

 

「くそぉ♨ ほんなこつ骨んなか連中やねぇ♨ こん先どっかで再会でもしたら、今度こそ嫌っちゅうほどヤキば入れてやるっちゃけね♨ なっ、おまえもそげん思うやろ……✄」

 

 胸に詰まった鬱憤{うっぷん}を、荒生田は自分の真横――右側に控えている、ワイバーンの頭部相手にぶち撒けた。それから荒生田は、無言となった。

 

「………………⛔」

 

 ワイバーンは荒生田の言う鬱憤とやらに応じるつもりか。大きく口を開いた。無論この次の行動は、グオオオオオオオオオオオオオオオオッと、高熱の火炎を酒場中に吐き散らすことだった。

 

 ワイバーンの右真横にいた荒生田は、危うくこの炎の洗礼を免れた。そのあと、ひと言一礼。

 

「こ、こりゃどうも……すんつれいいたしましたぁ……☠」

 

 すぐにこの場から、俊足で駆け出した。

 

「ど、どこん馬鹿チンやあーーっ! ワイバーンば逃がしたやつはぁーーっ!」

 

 逃げる荒生田の真後ろでワイバーンが、グアガゴオオオオオオオオンッと、高い吼え声を上げた。

 

 さらに床を踏み抜き天井を突きやぶり、酒場の破壊をおっ始めていた。


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