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『剣遊記番外編V』

第二章 深山の狼少女。

     (6)

 宿代はなし。おまけに野宿と比べれば遥かに安全快適なので、可奈と美香のふたりはなかば強引で、珠緒の家に宿泊することにした。

 

 初めは可奈も『だいじょうだかや?』などと不安を感じていたのだが、いざ泊まってみると、これがなかなか、『住めば都✌』の安心感があった。

 

 晩御飯は例の黒コゲ巨大ガニを回収して(浮遊の術を使えば軽い軽い♡)、再度の焼き直しを行なった。

 

 でもって、可奈と珠緒でカニの肉を、美味しそうに賞味している、そのすぐ横だった。今も人に戻っていない美香が、小屋に貯蔵されていた野菜や山菜にパクついていた。それを珠緒は、これまた不思議そうな顔をして、無心にエサ(?)をほおばる――もとい食事をしているカモシカ――美香を見つめていた。

 

「ねえ、美香さんって、いつまでカモシカんまんまでおるんねぇ? それにさっきから野菜ばっかし食って、カニは全然食べないんだけど……それでええべかなぁ?」

 

「それがあたしにもわからんずらよ☁」

 

 ここまでくると、可奈も面倒臭い気分である。そんな思いで、珠緒の問いに答えてやった。

 

「美香は見てんとおりのベジタリアンずらぁ☟ それともうひとつ、美香は人でおるよりカモシカでおったほうが、ずっとええらしいんだにぃ☁ まるでへんまがりみてえに、そこんとこさあたしにも理解さできねえんずら♑」

 

「ベジタリアン以前の話のような気もするんだけどぉ……もしかして美香さんって、ワーシーロー{氈鹿人間}じゃなくて、シーローワー{人間氈鹿}のほうじゃないの?」

 

「だいじょうだぁ……美香はいっちょ前のライカンスロープだにぃ……って思うんずらけどぉ……☁」

 

 一応否定はしたものの、可奈は珠緒からのご指摘に、半分真剣に考え込んでもいた。

 

(もしかしてぇ……ほんとにそうかもしれんかやぁ……?)

 

 ところが当事者である美香は、可奈と珠緒の疑惑など、てんで関係なし。好物の野菜と山菜に、パクパクと舌鼓を打つばかりでいた。


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