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『剣遊記番外編V』

第二章 深山の狼少女。

     (3)

 狼が人に変身! それも長い髪が背中の半分まで伸びた、十代後半くらいの日焼けが印象的な少女の姿に。

 

「ねっ! これでわかったでしょ! わたしワーウルフじゃけぇ!」

 

 たった今まで狼だった少女が、必死の様相で可奈に訴えた。これはまさに、攻撃魔術などまともに喰らってはたまらないと、心底からビビッているからであろうか。ただし、緊急的に狼から人へと変わったので、もちろん衣服の用意など、あろうはずもなし。だから真っ裸のまま、両手で大事な二箇所(言わずもがな)を隠し、可奈と美香の前で立ち尽くしていた。

 

 しかし可奈は、いきなり裸を見せる事態となった少女に対し、いまだ警戒心剥き出しの体勢(攻撃魔術の構え)で言い放ってやった。

 

「おんしもライカンスロープってわけぇ! もうちっとべぇ正体バラすんが遅かったら、確実に吹っ飛ばすとこだっただにぃ!」

 

「そうじゃあんかぁ☁ あんまりわたしをいじめないでぇ☂」

 

 狼だった少女が、今度は泣きそうな顔😭になった。だけどその姿を前にしてもなお、可奈は頑なな姿勢を崩そうとはしなかった。

 

「こんねんまくいじめたくもなるずらぁ! おんしが襲ったこんカモシカだけんど、こっちも立派なライカンスロープずらぁ! おまけにあたしの幼なじみで親友なんだにぃ!」

 

「ええっ? このカモシカもライカンスロープだったんねぇ?☀」

 

 涙目をしている狼少女の瞳が、今度は大きく丸く開かれた。

 

「なぁ〜んだ♥ どおりで獣にしちゃあ、動きが妙に人間っぽいって思っただえ☆ 飛びかかれば直前にかわしちゃうし、追い詰めてもグルグルちょろちょろ、上手に逃げ回るし……ってね♠♐♣」

 

「それもそうだにぃ〜〜☀」

 

 少女の指摘は、可奈にとっても思いつく話ばかり。この際ついでであるから、もっとビックリさせてやるだにぃ――と、美香と少女を交互に見比べながらで、可奈は挑発的言動を続行してやった。

 

「言っとくずらけど、美香は生まれ故郷じゃ『ウルフキラー』って異名さ持ってたんずらぁ♡ つまりぃ、自分さ襲った狼とか野犬なんかにあすぶみてえに逆襲さして、返り討ちにしよったんずらぁ♐」

 

「うっそぉーーっ! それほんとぉ? そんなことあんかぁ?」

 

 狼少女は本心から、可奈の戯言{ざれごと}を真に受けたのだろうか。そこのところはわからなかった。それでも彼女が思いっきりそうに驚いた顔を見て、可奈はしてやったりの気分に浸っていた。


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