『剣遊記14』 第一章 私は見た。 (2) 「きゃあーーっ♡ 二島先生ぇっ! おひさしぶりばいねぇーーっ♡☀」
酒場に突然、給仕係である田野浦真岐子{たのうら まきこ}のキンキン声が轟いた。
「うわっち?」
「なんや?」
声に気づいた孝治と正男は、速攻でやんやと騒いでいる彼女の方向に顔を向けた。真岐子は下半身がとてつもなく長い、虹色をした大蛇――いわゆるラミア{半蛇人}である。すぐにその姿が、ふたり(孝治と正男)の瞳と目に写った。それによるとどうやら、真岐子はある人物を出迎えていた。
「うわっち! あの人じゃん☜☞」
その人物を、孝治もよく知っていた。
「ん? 誰や? なんかエルフっぽいっちゃが☛」
反対に、正男にとっては初対面のようだった。ワーウルフの盗賊は目の玉を真ん丸にして、孝治に尋ねた。
無論孝治は、それに答えてやった。ほんの少しだけど、得意気な気分になって。
「見てんとおりのエルフ{森の妖精族}で、吟遊詩人ばやっちょう人ばい☻☛ あれでけっこう有名人やし、なんちゅうたかて、店長の昔からのお友達なんやけねぇ✍」
「エルフで吟遊詩人で店長のお友達なんけぇ……どおりで顔が色白気味やし、耳がとがっちょうように見えるっち思うたっちゃよ♐ それに、あの人が持っちょう楽器は竪琴ばいね☕」
正男が改めてその人物に目を向け、少々の薀蓄も交えてささやいた。
「さすがようわかっとうっちゃねぇ☺ それにあのエルフさんは真岐子ちゃんの元先生なんやけね☢ やきー口に気ぃつけないかんちゃよ☠」
「なるほどねぇ〜〜☻」
さらに孝治も念押し。これに正男がうなずいてくれたときだった。当の吟遊詩人であるエルフが、真岐子となにやら会話をしながら、孝治たちのほうへ顔を向けた。どうやらこちらの声が聞こえたようである。
「おや? 誰かと思いはったら、孝治はんやおまへんか☆ これはまたおなつかしいお顔でんなぁ☺」 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |