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『剣遊記]』

第三章 渡る世間は敵ばかり。

     (6)

「うぎゃああああああっ!」

 

 小枝を何本もへし折って、ドサドサドサァッと木の上から、ひとりの男が落下した。

 

「うわっち! な、な、なんねぇ、これぇ!」

 

 孝治は飛び上がるほどに驚いた(自己ジャンプ記録を更新!)。なぜなら孝治は、木の上に人が隠れていた気配を、まったく感じていなかったからだ。

 

 しかし荒生田は、その気配を見事に見破っていた。

 

「孝治、おまえは女になったからっちゅうて、精神に甘えができちょらんかったね? こんくらいの殺気☞ 以前っちゅうか、おまえが男んころやったら、すぐに気ぃついたはずっちゃけどねぇ☠」

 

「……面目しだいもありましぇん……☁」

 

 孝治はシュンとした思いで頭をうな垂れさせた。これは同行している涼子に、ひさしぶりに拝見させる光景でもあった。

 

『凄かぁ! 孝治が荒生田先輩の説教ば、すなおに聞きようっちゃ! ごく稀にしか有り得んこっちゃねぇ☆』

 

 さらに友美が、そっとささやき返してもいた。

 

「なんだかんだ言うたかて荒生田先輩っち、一流の戦士の実力があるっちゃよねぇ♠ それにしても今ん場合、孝治はちきっと迂闊やったみたいちゃねぇ♣」


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