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『剣遊記15』

第六章 我、真珠湾に上陸せり!

     (9)

 蟹礼座が連行をされた場所は、オアフ島ホノルル市郊外に建つ、一軒のレジャー型別荘だった。それも庭に専用のプールまで備えているなど、周辺に並ぶ高級リゾート型別荘と比べても、真に遜色の無い豪華な建物となっていた。これは大方、世界のどこかの小金持ちが、世界的観光地であるハワイの一角に、金に糸目をつけないで建築したのだろう。

 

 とまあ、このような建物の由来など、孝治たちにはどうでもよい話ではあるけど。

 

 それはそうとして、建物の周辺は定番どおり、警戒が厳重となっていた。それも各々その手に大型や中型の剣を握っている、いかにも海賊風のヤローどもが血走らせた目を光らせながら、別荘の周囲を歩き回っていた。

 

 頭を薄汚れているタオルで巻いた者。片目をそれらしいアイパッチで隠している者。完ぺきに王道である。

 

 孝治はささやいた。

 

「どげんします? わかっとうっちゃけど、真正面から堂々なんち、初めっから無理ってもんちゃねぇ☠☢」

 

 ささやく相手は美奈子だった。彼女はすなおに返答してくれた。

 

「うちかて、正面からの道場破りやなんて、ようしまへんもんやわぁ そやけど入り口はここだけやとも、誰も言うとりまへんのやで✌

 

「つまりぃ、別に入るとこを、早よ探したらええっちゅうことやねんな☻」

 

 孝治に応じ返すべき美奈子のセリフに、千秋のほうが先に、ニタリ☻顔で受けていた。もはや言うのも馬鹿らしい状況の事前説明であるが、別荘らしき建物を、背景の森の中から見張っている孝治たち一行(トラ以外の全員)。みんながみんな、水着姿のままでの、スパイ大作戦を熱演中でいた。

 

 当然に美奈子はこの期に及んでもなお、もはや完全に普段着の域に達している超マイクロビキニ姿でいるわけ。これで堂々と街中を歩いて毒呂井たちのあとを尾行するのに、違和感も問題もまったく無かったのだから、ハワイはやっぱり常夏の楽園である。

 

 格好の件はもう富士山級の棚の上に置いて、問題は蟹礼座氏の、現在の所在場所である。孝治たちの現在地となっている見張り場所は、別荘を遥か上のほうから眺められる高台のてっぺん。美奈子と友美の望遠魔術で透視したところでは、彼は別荘内の奥のほうにあるらしい、大きな広間に監禁されている模様。しかし現場の状況が判明しても、今の事態の打開策には、まだまだ程遠い状態であった。

 

 たとえこちらが得意の魔術を使って殴り込みをかけるにしても、敵のほうにどのような仕掛けがあるかがわからない。また敵に美奈子と匹敵するかもしれないような、手練れの魔術師がいる可能性もあるのだ。


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