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『剣遊記15』

第六章 我、真珠湾に上陸せり!

     (8)

「行っちまったばい……☁」

 

 オープンカフェのテラスにあるテーブルに残された孝治たちは、蟹礼座と毒呂井どもの、背中を眺めることしかできなかった。

 

「美奈子さん……☢」

 

 半分呆然の気持ちになっている孝治は、立ち上がったままの美奈子に、顔を向け直した。

 

「これでよかとですか? 美奈子さん、あの蟹礼座さんば大事にしよったとでしょう♐」

 

 美奈子も最初は、やはり蟹礼座の背中を見つめたままでいた。だがその視線がいつの間にか、ギラリときついものに変わっていた。

 

「うわっち!」

 

 思わずビビッた孝治に、美奈子がまるで宣言のようにして言ってくれた。

 

「……これでよろしゅうおま……なんてことはおましまへんのやで✄ このままあんじょう済ませたりなんかしますかいな このうちともあろう天才魔術師が……♨」

 

「うわっち! うわっち! 自分で言い切っちゃったばい!♋」

 

 孝治もひさびさに拝見をする、美奈子の強力な決意表明であった。

 

「おっ! 千秋もしばらくご無沙汰しとった、師匠の本気モードやで✌」

 

 今まで起きていた騒ぎを知ってか知らずなのか。このときになってようやくお遊びから戻ってきていた千秋が、驚きよりもむしろ期待感満々の顔で、師匠――美奈子に惚れ惚れの瞳を向けていた。

 

 もちろんいっしょに戻った秋恵も、燃える瞳となっていた。

 

「あたしかて、やるときはやるけんねぇ!」


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