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『剣遊記15』

第六章 我、真珠湾に上陸せり!

     (6)

「おや? ここにぎょーさんいらはる皆はん方は、蟹礼座はんのお知り合いでおましたんかいな?」

 

 ここまできて美奈子もようやく、周囲の状況の変化に気づいたご様子。その割に椅子から立ち上がろうともせず、トロピカルフルーツドリンクのご賞味をやめる気もないようだけど。

 

 無論、蟹礼座が言う毒呂井たちとやらの視線は、美奈子の超マイクロビキニ姿にも集中をしていた。

 

 これはまあ、(下心満々である)男であれば、当然過ぎる行動のひとつであろう。孝治と蟹礼座とて、もう何度美奈子のこのスタイルに、自分自身を見失いかけたものやら。

 

(くやしいっちゃけど、おれのビキニ姿んほうは、誰も見ちょらんみたいばいねぇ☠☁ まあ美奈子さんに完ぺきに負けとんのは、おれかて認めとうけどね☹☻

 

 などの、孝治の内心は置いておく。また、美奈子の超マイクロビキニスタイルに刺激されたことは明白であろうけど、連中の代表らしい毒呂井が、ようやく孝治たちに顔を向け、蟹礼座に改めて尋ね直していた。典型的なパワハラ上司みたいな、実にいやらしい顔付きだった。

 

「おい蟹礼座よぉ、このお嬢さん方とは何しょーるんかのぉ☻」

 

 このときになって毒呂井の周りにいる取り巻き(数えて八人)が、美奈子だけでなく孝治や友美たちのビキニスタイルにも、食い入るようにして目を付け始めていた。

 

 ついでに言えば、その内の三人は、だらしなくも涎を垂らしていたりする。

 

「こいつら……説明不要なくらい、正体丸見えっちゃね☝ つまりなんの集まりか知らんけど、要するに下品なチンピラやね☠」

 

 孝治の小声でのささやきに、友美もうなずいてくれた。

 

「わたしもそげん思うっちゃよ♐」

 

 しかし蟹礼座は青い顔をしたままながらも、一応フェミニストらしい気概を、孝治たちの前で披露してくれた。

 

「いなげなこと言うなや こん人たちは、わしを遭難から救ってくれた命の恩人じゃけえのぉ、手ぇどーしょんなら、わしがおどりゃーらをへしゃげて(広島弁で『潰して』)みせるけ、早よこっから去{い}ねーやぁ!

 

『きゃあっ、カッコよかぁ♡ これこそ広島弁での仁義なき啖呵ばいねぇ☀♡』

 

 涼子が無責任に、空中から囃し立てた。もちろんこれに気づく者は孝治と友美だけなので(もうひとり新人の千秋は、今も別の場所にてお遊び中)、毒呂井とやらは鼻で笑う態度を見せていた。

 

「へしゃげてみせるけぇ☻ っちゅうことはこのお嬢さん方も、いっこも無関係っちゅうわけじゃない、っちゅうことじゃのぉ☻☻」

 

 つまり孝治たちも獲物として、こいつら認識しちゃったわけ。

 

「やっぱ巻き込まれちまったばいねぇ☠」

 

 連中がこちらに向かってきた時点において、大方の展開を予測していた孝治であった。もちろん外れてほしかった予測なのだが、ここまで来たら、もうあとへも引けなかった。

 

「友美、それに涼子もよかや?」

 

「うん☻」

 

『ポルターガイスト{騒霊現象}の準備ならOKっちゃよ✌』

 

 今度はふたり(友美と涼子)して、コクリと孝治にうなずいてくれた。


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