『剣遊記15』 第六章 我、真珠湾に上陸せり! (2) 「うっわああああああああい☆☆☆ 憧れのハワイ航路さんですうぅぅぅ☀☀☀ 浜辺さんがぁとってもきれいきれいしてますですうぅぅぅ☀☺☺」
「なんか……嘘みたい……☁」
甲板右舷側手すりから、ワイキキとやらの海岸を眺めている千夏が、今まで見せてくれた中で一番最上級的な大はしゃぎっぷりを、メンバー全員に披露した。
それも無理はなし。孝治とて夢の夢のまた夢の世界だと思っていた海外旅行が、予想以上となった話の脱線的展開ぶりで、見事に実現してしまったのだから。
今、らぶちゃんの右舷側に集結している者たちは、蟹礼座を除く元からいた面々ばかり、七人が勢ぞろい。生まれて初めて見るハワイ――オアフ島の光景に、瞳を釘付けとされていた。
「おれたちってほんなこつ、夢ば見よんとちゃうやろっか?」
何度もハワイの名称を口にしておきながら、孝治は今になって、現実を見失った気分になっていた。なにしろ最初は美奈子の気まぐれに付き合って、短い期間内での海洋冒険くらいにしか考えていなかったのだ。それがなんの運勢の巡り合わせなのか、とうとうこのような本当の大バカンスにまで発展するだろうとは。
まさに神でも仏でも、この旅の先の見通しはできなかったに違いない。
「なん言いよんね☻ 自分のほっぺたばつねってみ☞」
なんとなく呆然気分の渦中にある孝治に、左横から友美がポンと、軽く背中を叩いてくれた。右手でもって。
「ここまで来てしもうたら、もう覚悟も度胸も出る幕なかっちゃけね⛑ これも全部美奈子さんの幸運のおかげや思うて、感謝感謝大感謝の気持ちば見せるだけっちゃね♐」
「そ、そうっちゃねぇ……☁」
その『度胸』とやらが発達している友美に言われて孝治は、自分の右横――千夏と千秋の向こう側に立つ、やっぱり黒の超マイクロビキニ姿でいる(やっぱり書き続けます☻)美奈子に瞳を向けた。彼女は長い黒髪を潮風になびかせつつ、なぜか無言でオアフ島の景色に見入っている様子。これでは今のところ、美奈子がいったいなにを考えているのか、孝治にはまったくわかりようがなかった。
「ここでひとつ言えることは……美奈子さんがやっとあの格好のまんま、まるで違和感の無い所に行けるっちゅうことやね☻☕」
孝治は美奈子には聞こえないよう、やっぱり小声で、友美と(ずっといっしょにいる)涼子相手にささやいた。もっとも波の音がけっこうにぎやかなので、その辺の心配は、かなりの無駄で済みそうだけど。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |