『剣遊記15』 第六章 我、真珠湾に上陸せり! (15) 「はあーーっ!」
「はあーーっ!」
友美と美奈子のコンビ魔術で、もう何十人目になるのかわからない敵を、見事衝撃波で吹き飛ばした。その直後だった。廊下でのびている彼らを残酷にも足で踏みつけ、また新たな刺客が登場した。
「もう、ええ加減にしてほしかっちゃねぇ☠」
友美たちよりも敵の前に出た孝治は、心底からウンザリした。
「次から次へと、ここにはいったい、何人用心棒がおるっちゃね✄ こいつら雇うのも、馬鹿にならん小遣いがいるっち思うんやけどねぇ⛱」
孝治のこのような愚痴的つぶやきは無視をして、現われた男が、謎の高笑いを勝手に始めた。
「くっふははははははははっ! おんどりゃーが、わいらを仰山痛ぶってくれよう女どもやてなぁ☠☻ おのれら小娘が、よう暴れてくれるもんやんけ☻✊」
「なん言いよんやろっか、このおっさん?」
「この人、広島弁やのうて河内弁ば言いようことだけはわかるっちゃけどねぇ✍ いったいどんくらいの日本のヤーさんが、このハワイまで進出しとるとやろっか!?」
孝治と友美そろって、いきなり登場した男の全身を、頭のてっぺんから足のつま先まで、上から順に眺め回してみた。そこへもう聞かなくてもだいたいわかるのだが、美奈子が偉そうな態度で、男についての指摘をしてくれた。
「これはこれは、おふたり目はんの魔術師はんでおますな☜ ようこないな暑い中、黒衣を着ておられるものどすなぁ☻ もしかしてこれは今度こそ、骨と実力のありはる魔術を期待したいものどすなぁ☺☻ 先ほどのはあまりにも骨が無い弱い方どしたので、うちがあんじょうよう寝かしてやりましたけどな☺☻」
「なんや? ふたり目やと☛」
着衣(言うまでもなく自分の黒衣)の件にはもう触れないで、それよりも新登場の魔術師は、美奈子の言葉尻に関心を向けたようである。
「もしかして……われが言うとんのは、鵜津精{うつせい}のことなんけぇ?」
美奈子もこれですぐに、ピン💡ときたみたい。
「なんや、先に始末した魔術師はん、そないなお名前でおましたんかいな✍☻ まあ、お名前なんて言うもんは、実力の無いモンには、そないに意味のあるもんでもおましまへんけどなぁ☕」
「やめんかい、われぇ!」
なぜか鼻で笑うような態度の美奈子に、ふたり目魔術師が激昂した。
「?」
孝治もそれを不思議に感じたが、その疑問はすぐに解消した。当のふたり目魔術師が、あっさりと答えてくれたので。
「わいの名は美鬼や! で、われが先にやったっちゅう鵜津精っちゅうのは、わいの弟のことなんやあ!」
「ありゃ、兄弟やったっちゅうことね☠☢」
それならば急な怒り表現も納得。孝治はふむふむとうなずいた。そんな少しゆるんでいる空気はともかくとして、美鬼と名乗ったふたり目魔術師のほうは、これで本当の本気になったようだ。
「弟の仇{かたき}、このわいが討ったろうやんけぇ!」
「そりゃ兄弟ならそげな展開になるっちゃろうけど、その鵜津精って人、死んだっけ?」
友美が先ほど行なわれた、美奈子と鵜津精の戦いを思い出そうとしているように、頭を右にひねった。
『死んじょらんばい☃ 黒コゲんなって、今も口から煙ば吐きよったけ⛑』
涼子も横から口を出すが、もはや美奈子と美鬼の魔術対決は、誰にも止められない様相となっていた。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |