前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記 超現代編U』

第五章 MAX級ハプニング! 運動会がやってきた。

     (9)

 このハプニングをチャンスとしてか、それとも背中の豊乳の感触以外、一切の感覚を失っているのだろうか。和志は前方でオロオロ😰している走者たちを、当たるを幸いに蹴散らしていった。

 

 こんな場合ふつうだったら、『どけどけどかんかぁーーい!』などの怒号をわめき散らすところだが、今の和志は、まるで無言のランナー。あとで本人から直接聞いて確信したのだが、和志はこのとき本当に、背中の感触以外、一切自分の周辺の状況に気がついていなかった――と言う。

 

 そんなほとんど無感覚状態で走っている和志の背中にしがみついていたのだから、当然に孝治のほうも、火事場の馬鹿力的パワーを発揮していたはずだ。

 

「うわっちぃーーっ!」

 

 そのためか、孝治の豊乳がさらに力を込めて、和志の背中に押し付けられてくるわけ。これがまた、和志に大きな(無駄な)エネルギーを与えないはずがない。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ! オレは今、モーレツに燃えてるぞぉーーっ!」

 

 もはや自分でもわかっていないであろう雄叫びを上げ、ついにトップチームすらも逆にゴボウ抜きした和志が、見事にゴールのテープを突破した。

 

「お、おい! もうおまえは勝ったんだぞぉ!」

 

 ゴール地点に立つ北方先生が大声で飛び止めても、和志の足はまるで停止をしなかった。

 

「るせえーーっ! このまま走らせろぉーーっ!」

 

 今や耳に入る他人の言葉は、すべて邪魔な雑音と化しているかのよう。本来ならば、この時点で孝治を背負う理由は終わったはずだ。ところが和志は、そのままおんぶ状態を続行。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 雄叫びすら止めようとはせず、和志はひたすら走り続けた。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system