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『剣遊記 超現代編U』

第五章 MAX級ハプニング! 運動会がやってきた。

     (8)

 そしていよいよスタート。リレーは実戦中なので、バトン地点でグズグズしている暇などはない。さらにこれも遠くから見てよくわかる状況なのだが、相変わらず他のクラスの連中から、和志は羨望と嫉妬の目を集めていた。実際、おれも進一も永二郎も裕志も、そうだったのだが。

 

 ところが――である。和志の馬鹿野郎、孝治の巨乳の感触に興奮しまくりやがって、スタートラインの所でモタモタしてやんの。

 

 あっという間にボコボコと、他のクラスからゴボウ抜きにされやがったではないか♨

 

 気がつけば我がB組は、情けないほどのビリ丸出し。今までの好成績は、いったいなんだったのか

 

 おれも思わず叫んだ。和志とは違う意味合いの、大真面目に怒り狂った気分全開で。

 

「アホたれぇーーっ! 早く走らんかぁーーい!」

 

 おれ以外のみんなも同調してくれた。

 

「馬っ鹿野郎ぉーーっ! いつまでスケベ根性に浸ってやがんだよぉーーっ!」

 

「アンカーやらせろって言うたの、おまえ本人じゃねえかぁーーっ!」

 

「ええ加減にさらせやあっ! こんボケカスぅ!」

 

 念のため、順番に岳純、弘路、光一郎が大きな声を上げていた。

 

 無論和志とて、これらの声が聞こえていないはずはなかった。

 

「じゃかぁーーしぃーーっ! 本番はこれからじゃーーい!」

 

 まさに見てよくわかるほどの一念発起。孝治を背中に背負った和志が、(再び)オリンピックも真っ青なほどの、超猛ダッシュで駆け出した。

 

 毎度のパターンながら、ここで和志が吠えた。いったい生涯に何十回吠えれば、この男は気が済むのであろうか。だけど理由は、わかり過ぎ。孝治の胸の弾力が、何回でも言うが遠くから見てもよくわかるとおり、和志の背中にピッタリと密着しているからだ。

 

「ぬおおおおおおおおおおおおっ! なんという凄まじいボリュームと破壊力なんじゃあーーっ!」

 

 和志がまたも吠えた。これもすでに経験済みの身でありながら、その叫びたい気持ち。おれにまでバンバンと、充分以上に伝わってきた。叫んでることも、まったく同じだし。

 

 さらに――である。一応ひとりの人間を背負ってかなりのハンディキャップでありながら、和志の猛ダッシュは、地球に棲むすべての人類の能力を、遥かに超越するものだった。

 

 一度完全にビリケツとなった不利など、一切お構いなし。そのダッシュ力を百パーセント以上に維持したまま、和志が超スピードでグラウンドのコースを駆け抜けた。

 

「うわっちぃーーっ!」

 

 背中に乗っている孝治が、たまらずか悲鳴を上げていた。その甲高い悲鳴に、先行していた他のクラスの面々たちが、遠くにいるおれの目から見ても明らかに、走る足をピタッと止めていた。

 

 これもある種の『金縛り』現象なのだろうか。


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