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『剣遊記 超現代編U』

第五章 MAX級ハプニング! 運動会がやってきた。

     (10)

「いかん! 和志を止めろぉーーっ!」

 

 ここまで至ってようやくであるが、進一を始め我がB組の面々が、暴走を続ける和志を追い駆け始めた。

 

 おれも無論追い駆けた。いや、B組ばかりではない。運動会に参加中である港南工業高校の全生徒と教員たちも、これはヤバいと和志を本気で追い始めた。なぜなら和志は孝治を背負ったまま、ついに校門を越えて校外にまで飛び出してしまったからだ。派手な砂煙を巻き上げながらで。

 

「ぬおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 興奮の極致に達しているに違いない和志が、街中で恥も外聞もなしに吠えまくった。それを追いながらよく見れば、孝治は恐怖のあまりか、さらに必死そうな力でもって、和志の体にギュッとしがみついているようだ。

 

 こちらはもはや、声も出せない心境みたい。当然自分のDカップが、和志に無駄なエネルギーを与えているなど、きっと思いもしていない状態でもあるだろう。

 

 さらに道を歩く港南工業高校とはなんの関係もない一般市民たち(帰宅中のサラリーマンとか、買い物中の奥さんたち)も、この男子高校生たち総動員による一大マラソン大イベントに、全員がその足を停め、大きく目を見張っていた。

 

「こりゃ、あしたの朝刊トップの話だよなぁ☻」

 

 ほとんど一般の道を走りながらおれは、これまたつまらない愚痴を続けていた。実際おれはもう、必死を飛び越えて祭りを楽しんでいるような心持ちなのだ。

 

 たまにはこんな大騒ぎも悪くない――と言ったところか。

 

 けっきょく運動会終了の閉会式時刻が過ぎて夜になっても、孝治を背負う和志はおれたち全校生徒や教師たちの大追跡を振り切って、それこそエネルギーが持続するまま、学校周辺を半永久的に走り続けたとさ。

 

 アホみたいな後日談。


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