前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記 超現代編U』

第五章 MAX級ハプニング! 運動会がやってきた。

     (5)

 でもって話は急展開で飛んで、きょうは早くも運動会の日。これまた早くも、おんぶ競争の競技スケジュールがやってきた。

 

「孝治、本当にいいのか?」

 

 一番手であるおれは、念押しで孝治に訊いてみた。孝治はツバをゴクリと飲みながらで、おれにコクリとうなずいてくれた。

 

「うん、いいよ もうこうなる運命ってわかってたから☻☠

 

 そのしおらしい姿。もう何度も拝見済みなのだが、女子用の体操服と紺色ハーフパンツを着用している今の孝治の格好が、毎度のことながらおれの『守ってあげたい』感を、非常に刺激しまくってくれる(もちろんおれ自身は、ふつうの体操服姿)。

 

「おい、秀正に孝治っ! 早くスタートラインに立てよ♐」

 

「うわっち!」

 

「あっ、いっけね!」

 

 孝治とおれは永二郎から急かされ、慌ててグラウンドのスタートラインの所まで小走りをした。このときになって初めて気がついたんだけど、おれたちB組以外の他のクラス連中全員、こちらに羨望と嫉妬の目を向けていた。

 

 それも無理はないと思う。なにしろB組以外のクラスはすべて、背中におぶっているのは、同じ同級生の小柄な男子ばかりなのだ。まさに女の子を背負える特権を有している者は、全校広しと言えど、おれたち2年B組だけ。この羨望と嫉妬がこれ以上、怒りの炎に変わらなければいいんだけどなぁ☠☢

 

「それじゃあ、乗るね

 

 と、こちらも覚悟を決めてるらしい孝治が、静かにおれの背中に手をかけた。そしておれは、人類史上空前の脅威を味わった。

 

「うおおおおおおっ!」

 

 おれは思わず奇声を上げてしまった。その理由は、このとき初めておれの背中に接触する、孝治のDカップにあった。それが物凄いボリュームでもって、おれの背中にベタンと重圧をかけてきたからだ。

 

「こ、こんなに強力なもんだったのかぁ!」

 

 服の上どころか、生{なま}で目撃したことも、すでに経験済み。しかし直接の接触は、きょうが初めての体験だ(神に誓う。あのとき胸を見る行為は避けていた)。とにかくこの奇声で、周囲の視線が、一気におれと孝治に集まった。

 

「こらぁーーっ! そこのふたり、静かにせんかぁーーっ!」

 

 スタートのピストルを持つ北方先生から、おれは思いっきりに怒鳴られた。

 

「は、はい! すみません!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 背中に乗ってる孝治までが、そのままの格好でペコペコした。完全におれの巻き添えになった感じで。おれは孝治にすまない気持ちとなった。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system