『剣遊記 超現代編U』 第五章 MAX級ハプニング! 運動会がやってきた。 (2) はた目に見てもよくわかるほど、孝治が思いっきりに困惑した。丸くて大きな瞳を、さらに真ん丸として。だけどおれには、和志が吠える理由が、一瞬にしてわかっていた。おれだけじゃないとは思うが。
「あいつがこのチャンスを見逃すはず無えんだよなぁ☻☠」
要するに和志は、自分が孝治をおんぶしたいのだ。このおんぶ競争はリレー式なので、決して和志ひとりが孝治を独占できるものではない。交代で競技に参加する者すべてに、平等にチャンスが与えられるわけである。
孝治――女の子を合法的におんぶできると言うチャンスが。
和志はそれでもいいみたい。恐らく現在、やつの頭の中では、孝治が最も体重が軽そうだと思えること(データ無し)を大義名分にして、その胸の感触を思いっきりに、自分の背中で堪能したいのだろう。いや、クラス全員の頭の中が、そうなってるに決まっている。
おれも同じ考えなんだから、これは絶対に間違いない。
「そうか、それも一理ありだな☺」
ここでなぜか、今まで黙って選手決めの様子を眺めていただけの帆柱先生が、急に和志に肯定的なことを言い出した。ここまでは生徒の自主性を重んじて口を出さないようにしていたけど、ひと言発する必要性でもできたのだろうか。
「確かにこれに勝つためには、一キロでも体重の軽い者をおんぶするほうが有利だな✌ 孝治、ここはB組の勝利のため、バトン役を務めてくれんか✋✊」
「は、はい……☁」
担任の先生からこうまで言われては、いくら不本意でも、孝治は従わざるをえないだろうな。その代わりでもないが、周りのヤローどもが、大袈裟に孝治の英断を称えてやがる。
「よくぞ言った、孝治!」
「おまえこそ我がB組のマドンナだ✌」
裕志や弘路らの無責任な囃しはもちろん、他の(一応真面目派メンバーである。ほんとにか?)光一郎や正男までが、大きな賛成の意を示していた。
「うん、先生もええこと言うもんやなぁ✌」
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