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『剣遊記 閑話休題編V』

第三章 激闘! 悪をつらぬく角一本。

     (6)

「うわっち! うわっち!」

 

 さらに防具を結んでいた紐までが、プチンと音を発して切れたらしい。鎧の下の部分がバサッと、地面にポロポロ脱げ落ちた。つまりがパンティー一枚を残して、孝治は下半身丸出しの格好となったわけ。

 

「うっひょおーーっ☀♡ 目の保養ぉっ♡」

 

 スケベ衛兵代表(ひとりだけ)の井堀が一番に歓喜した成り行きは、これはこれで想定の範囲内。無論こいつひとりが喜んだわけではない。このラッキースケベな展開に、居並ぶ男性陣みんなが、盛大な拍手を鳴らしていた。

 

「ぶらぼぉっ☀ ぶらぼぉっ☆ 孝治、ひさしぶりの大サービスっちゃねぇ☺☺

 

 いつまでたっても拍手喝采をやめない秀正に、孝治は大声で怒鳴りつけてやった。

 

「てめえっ! 律子{りつこ}ちゃんに言いつけるけねぇ!」

 

 『律子』とは秀正の愛女房である。

 

「わわ、わかったっ! ごめん☻」

 

 秀正が慌てて両手を前に出して手の平をパタパタと左右に振るが、その目はしっかりと笑っていた。また秀正の左横では、裕志が恒例の鼻血を垂らしていた。さらにそこへ、大門の雄叫びが入ったりもする。

 

「うおーーっ! 我が花嫁よぉ! 油断している場合ではないぞぉーーっ!」

 

「うわっち!」

 

 いまだに孝治を花嫁候補にしている奇想天外は脇に置く。とにかく孝治は、大門の大声で、ハッと我に返った。これはこれで、なかなかに有り難い助け船であった。そこへ言われたとおり、芽羅の長槍の第二撃が、ビュッと孝治に襲いかかった。

 

「うわっち! うわっち! うわっち!」

 

 超ひさしぶりの『うわっち!』三連発である。しかもこの攻勢で、孝治はまたも鎧の背中部分を、ブチッと裂かれる有様となった。

 

「うわっち!」

 

 今度は鎧の胸装甲の部分がカパッとうしろから外れて、上半身も見事に丸出しの状態。残るはブラジャーのみとなる。ちなみに色は白。

 

「敵さん、グッジョブばぁーーい

 

 井堀のバカが、さらなる無責任な声援を送っていた。孝治の対戦相手である芽羅に向けて。

 

「くっそぉーーっ♨ こっちかてやられっぱなしやなかっちゃけねぇ✊✊✊

 

 ついに孝治も本気になった。それなら今までは嘘っこ?――などと訊いてはいけない。


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