『剣遊記 閑話休題編V』 第三章 激闘! 悪をつらぬく角一本。 (5) 「たあーーっ!」
謎の事情は棚の上。今度は孝治のほうから、先に仕掛けてやった。
「ちょこざいな!」
その真正面からの剣の突きを、芽羅が長い槍を振ってガチンと払ってくれた。
もう一度繰り返すが、一般的に接近戦の場合、剣と槍では剣のほうが有利な例が多いもの。一回槍先をかわして身を寄せさえすれば、槍側に対処など不可能に近いからだ。しかしそのような戦法を、芽羅は孝治に絶対のようにさせてくれなかった。
「う〜ん、絵に描いたみたいなこう着状態っちゅうやっちゃねぇ☁」
孝治はうなった。あまりこのような状況に時間をかけたくないあせりもあって。
「とあーーっ!」
そんな孝治の隙を見抜いたのか。芽羅のほうから長槍の先端を突き立て、まっすぐ孝治に突っ込んできた。
「うわっち!」
孝治は半分――いやいや全身で慌てまくりつつ、我が身をひらりと右にかわした。
だが遅かった。突き立てられた長槍の先端は、パサッと軽い音を立てて孝治の軽装鎧の右わき腹部分を斬り裂いたのだ。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |