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『剣遊記 閑話休題編V』

第三章 激闘! 悪をつらぬく角一本。

     (3)

「うおーーっ! 北九州衛兵隊隊長の大門信太郎参上! 誘拐容疑で全員逮捕するぞぉーーっ!」

 

 ついに機は熟したと言うべきか。大門隊長たち衛兵隊の一団が、現場にドカドカと乱入した。

 

 一応説明をしておこう。衛兵隊は決して、指をくわえて詰め所にこもっていたわけではない。彼らは人質解放交渉の現場(どうも平尾台らしい)の遥か西側の遠方にある森の中において、黒崎店長の提案もあって、一時待機をしていたのだ。

 

 その攻撃合図は、店長が持っているビジネスバッグから発せられた、白い発煙によって――であった。

 

 つまり狼煙{のろし}に近いような感じの方法。だがこのような原始的発想が、時にはとても有効な手段となるものだ。

 

 またその衛兵隊の中に、裕志と秀正と正男も加わっていた。やはり最後の決戦時の、殴り込み要員として。

 

 しかも誘拐団である彼女たちにとっては、まさに間の悪いタイミング。ほとんどの者は突然の地震(実はポルターガイスト)にビビって、今も地面に四つん這い姿勢のままなのだ。

 

「きゃん! 男が来たぁ〜〜

 

「あ〜〜ん😭☂ ズルぅ〜〜い☠」

 

 まったく抵抗のできないまま、あっと言う間に御用御用の顛末。友美も涼子も、もう鼻高々である。

 

『あたしたちの共同作戦ってとこっちゃね☆ 別に打ち合わせもなんもなかったとやけどね✌』

 

「きょうも涼子に礼ば言うてもよかっちゃよ なんちゅうたかて、わたしがピンチやったんは事実なんやけ

 

 そんな友美と涼子の見ている前だった。美女軍団――もとい誘拐団の一味が次々とお縄となっていた。実際彼女たちも魔術師のはずだが、こうもあっさりと検挙される話の展開になろうとは。

 

よほど涼子のポルターガイスト――いや、今でも彼女らは突然の地震発生と思っているはずだ――いや、地震で腰を抜かして、こうも簡単に戦力外となるものだろうか。

 

 その中には当然、先ほどヌードを披露した、関西訛りの美少女魔術師もいた。彼女はけっきょく、地震(ポルターガイスト)と捕り物のドサクサで、再び玉の肌を公衆の前で公開する破目となっていた。

 

「あ〜〜ん☂ なんでうちだけこんな目に遭うんやぁ☃☃」

 

「にひゃひゃ☻☻ きょうの捕り物は、おれにとっちゃすっごいやりがいのある仕事ばいねぇ✌」

 

 彼女のヌードを堪能しているスケベ衛兵の井堀が、その本音をまったく隠そうともしていなかった。

 

「あ〜〜ん☂☂ 助けてぇなぁ⛑⛐

 

 そんな彼女が救いの手を求めた者。その人物はなんと、黒崎店長であった。

 

「と、とにかく、服を着るがや。僕も目のやり場に困るから……」

 

 黒崎は自分の上着を脱ぎ、そんな彼女の背中にそっとかぶせてやった。実に紳士的極まる対応の仕方で。

 

「……お、おおきに……☀」

 

 美少女は目線を上げて、黒崎の顔を見つめていた。それからあとは、美少女はずっと、黒崎のそばに寄り添ったままでいた。またそのうしろでは、先輩衛兵である砂津が、後輩の井堀にやんわりと注意などをしていた。

 

「おい井堀よぉ、そんぐらいにしときんしゃいよ あとでこれがセクハラ問題にでもなったら、先輩のおれかて弁護できんけね⛑⛔

 

「はぁ〜〜い✌」

 

 返事はすなおだが、あまり反省の色を感じさせない井堀であった。この一方で秀正と裕志のふたりは、なんだか呆気の無い事の顛末に、苦笑じみのため息を吐いていた。

 

「なんか、おれたちの出番、ほとんどなかみたいやねぇ

 

「ほんなこつ☁」

 

 このふたりのまたうしろから、正男がある一点を右手で指差した。

 

「いんや、まだまだ終わっちょらんばい☠ あれば見てみい☛」

 

 正男の右手人差し指の先では、孝治と槍の達人魔術師が、今も対峙を続けていた。


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