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『剣遊記 閑話休題編V』

第三章 激闘! 悪をつらぬく角一本。

     (2)

「とぁーーっ!」

 

「うわっちぃーーっ!」

 

 孝治の剣と女魔術師の長槍先端部分が、ガチンガチンと、火花を散らしてぶつかり合った。

 

「こいつ! なかなかの槍の達人ばい!」

 

 孝治は一瞬にして悟った。魔術のほうはわからんちゃけど、実際に槍術は絶対に侮れんほどの実力がありそうっちゃ――と。

 

 こりゃ甘い顔したとたん、こっちがあの世行きっちゃね――とも。

 

 相手が掛け声だけなのも、非常に不気味でもあるし。

 

 この一方で、友美も数人の同業魔術師相手に苦戦をしていた。

 

「ちょっとぉ! 一対五人なんち、不公平もええとこばい!」

 

 友美の言い分も、もっともであろう。敵はリーダー格である是美も加えて、元からいた残り連中が総掛かりで、友美ひとりにかかっているのだから。

 

「はあっ!」

 

 友美も得意の火炎弾魔術を繰り返し発射するのだが(けっこう効果はある感じ✌)、相手とて同じ火炎弾を返してくる状態。これではやはり、多勢に無勢は否めない。

 

『ここはあたしの出番ちゃね✌』

 

 今までずっと様子見をしていた涼子が、今になってやっと、手助けの模様。

 

『えーーい! ポルターガイスト{騒霊現象}いっちゃるばぁーーい!』

 

 誰にも聞こえない(はずの)掛け声を、涼子が大きく発しまくった。とたんに地面がグラグラと、右に左に横揺れを開始。これははた目には、ただの地震に見えたりして。

 

「きゃっ! なにこれ!」

 

 当然幽霊(涼子)の存在を知らない誘拐グループが、これにてパニックにならないはずがない。先ほど『はた目にはただの地震』などと記したのだが、出し抜けに地震が起きて、これで驚かない人などいるはずがないのだ。

 

「ちょ、ちょっと! 冗談やなかばい!」

 

「きゃあーーっ! 怖かぁーーっ!」

 

 たちまち五人全員、地面に膝と手をつき、ほとんど四つん這いの格好。いきなりの地震に怯えまくっていた。

 

「涼子もやるっちゃねぇ✌」

 

 もはや周りの目などお構いなし。友美が涼子に、右手でのVサイン✌などを送っていた。これにまた涼子も、右目ウインク😉と左手のVサイン✌で応えていた。

 

『あたしにかかったら、こげなん朝めし前っちゅうもんちゃよ✌✌』


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