『剣遊記 閑話休題編V』 第三章 激闘! 悪をつらぬく角一本。 (19) 脱衣場からドタガシャドカンと、なにやら大きな物音が反響しまくった。あとで理由を訊いたところ、孝治は脱衣場でカゴに足を引っ掛けて、ドタンバタンと転げ回った――と言うことらしい。
やはり動転気分から、まだまだ立ち直っていないままのようだった。
このあと浴場に残った者たちは、友美と綾香と涼子の三人だけとなった。
綾香にはやはり聞こえていないだろうけど、涼子が呆れ気味にささやいた。友美の右耳にそっと。
『今ちょっと壁の向こうば覗いたんやけど、孝治ったら服も着らんで風呂場から出て行ったっちゃよ☢ ついでにあっちこっちで転びまくりながらやね☠ このあと絶対、店中が大騒ぎになるっち思うっちゃけど⛐』
「孝治んことは、もうほっとき⛔」
涼子の存在を気づかれないよう小声で応えつつ、友美は綾香に顔を向けた。
「まあ、あげな孝治っちゃけど、根は優しゅうていつも女ん子の味方ばしてくれる頼もしい戦士やけ、これからも仲良うしてやってね♡」
「うん☺」
その綾香が肩まで湯に浸かったまま、やはり肩まで入り直した友美に訊いた。
「なんか、あーちゃんのためにこげんまでしてもろうて、ほんなこつよかですか? そしてぇ未来亭ってほんまええとこやっち、今改めて思いましたわぁ♡」
友美も笑顔で応えてやった。
「そんとおり、ほんなこつええとこなんやけ♥ 変わりモンが他んとこより少々多かっちゅうのが、難点言うたら難点なんやけどね☻」
このふたり(友美と綾香)の真上からは、涼子も含み笑顔になってささやいていた。
『次にまっすぐ角が伸びるまで一年かかるんやねぇ⛴ かなり長いっちゃけど、そん間はふつうの女ん子としていられるっちゅうことやね♐ でもまた一年後に、きょうみたいな騒動が絶対また起きるっち、あたしの勘がきゃんきゃん騒ぎようっちゃよ♡』
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