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『剣遊記閑話休題編U』

第二章 黒川温泉、陰謀の桃源郷。

     (4)

 だけど彩乃はもはや、完全開き直りの境地にあった。

 

「あってまあ! でも、こがんなったら、もうしょうがなかばいねぇ☠」

 

 すでに慌てる素振りもやめ。それに祐二も、まだまだ溺れている最中(?)なので、彼に彩乃の裸を鑑賞できる余裕はなかった。

 

 そこで彩乃は偉そう気分になって、大言壮語をしてやった。

 

「せっかくやけん、わたしがコウモリになるとこば、望みどおりに見せたげるばってん、これって滅多にせん大サービスやけね♡」

 

 しかも現実問題として、浴場から脱衣場まで、かなりの距離があった。またこれ以上、ヴァンパイアの能力自慢をするつもりもないし、裸を見られ続けるほうが、実はずっと癪なのだ。

 

 けっきょくこの場の立ち位置で、一応バスタオルを体に巻き直した彩乃は、軽くジャンプ。パッとその姿を、得意の大コウモリに変化させた。

 

 浴場の床板に、はらりとバスタオルを落として。

 

 さらに大きめの翼を羽ばたかせ、まっすぐ脱衣場の方向へと飛翔。コウモリ(彩乃)が行ってしまい、ようやく気を取り直した祐二は、いまだお湯に浸かったまま(しかも着衣のまま)、こちらも舌打ちの顔でつぶやいていた。

 

「ちぇっ! やり方ばやおいかんかったわぁ☠ こぎゃんうち喰らわさるっち思わんかったけねぇ☠」


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