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『剣遊記\』

第五章 瀬戸内海敵前上陸戦!

     (6)

「とりあえず、異常なかったで☣」

 

 捜索から戻った下っ端海賊の報告は、実に投げ槍気味な感じでいた。

 

 それも無理はなし。彼らは宿舎でサイコロ博打を打っていたところを緊急に呼び出され、最初は海岸での警戒だけだと言われていたのに、首領の気変わりで急きょ、海上まで捜索を強いられる破目となっていたのだから。

 

 獲物である一般の船舶が航行しているならともかく、そのチャンスが少ない夜の海面は、まさに不気味そのもの。暗い海底には、いったいどのような怪物が潜んでいるのか。まさに海に慣れた海賊でも、恐れるには充分すぎるシロモノなのだ。だから任務が終了して陸に上がり、今はやれやれといった心境になっていた。

 

「おっ? もう一隻帰ってきよるで」

 

 そんな海賊たちの前に、今になってのこのこと、岩場に入ってくる船があり。

 

「おい、あんな船、わいらの船ん中にあったかいな?」

 

 海賊のひとりが自分の右隣りに立つ仲間に尋ねるが、そいつも首をひねるばかり。

 

「さぁねぇ……?」

 

「でもちゃんと、オレたち海賊の旗立てとうがな☞ やっぱし仲間やろ☆」

 

 別の海賊が言うとおり、遅れて岩場に近づく船のマストに掲げられている旗には、全体の色は黒で夜の闇に溶け込んで見えるが、真ん中に海賊の印であるドクロのマークが、はっきりと白く描かれていた。またそのドクロが、浜からの篝火に照らし出されて反射され、なにやら物凄いド迫力も感じさせた。

 

「やっぱ仲間やな☛ おい、板を渡してやんな☻」

 

「へい⛑」

 

 この場において、最も目上でいるらしい頭に赤いタオルを巻いた男が、周りにいる手下たちに命じた。すぐに手下たちが、今にも接岸をしようとしている船の右舷に、岩の上から長めの板を投げ入れた。

 

「こない夜までご苦労やったなぁ⛇ また酒の飲み直しでもやろうかいな……ぎょっ!」

 

 出迎えた海賊は、あくまでも親切のつもりで言ったのであろう。しかしそのお返しの礼は、とがった剣の先だった。


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