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『剣遊記\』

第五章 瀬戸内海敵前上陸戦!

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 同じころだった。戦闘からさっさと背を向け、漁船から降りていた美奈子と双子姉妹は、三人だけで島の南側――戦闘の真っ只中にある北側とは正反対――の断崖から、『浮遊』の術を使って上陸していた。

 

 これにて敵地への潜入を、楽々と果たしたわけ。

 

「思うとったとおりどしたなぁ☀ 海賊の皆はん、総動員で孝治はんたちの所へ行っておますようやさかい♡」

 

 島の南岸が断崖絶壁であるらしい話を、美奈子は老漁夫から始めに聞いていた。それと同時に、密かに島への潜入を行なうには、そこしかおまへんなぁ――とも考えていた。

 

 それがたとえ、味方を出し抜く行為になっているとしても。

 

 もちろん南岸は、元から警備が手薄だった場所。その理由に加えて現在は海賊が全員、孝治や帆柱たちに応戦中。結果、ここには人っ子ひとり――それこそアリの子一匹も、見張りが残っていなかった。

 

 そのような状態を見越してこそ、計算高い美奈子と双子姉妹は、大胆極まる振る舞い――味方を出し抜いての単独行動に出たわけなのだ。

 

「師匠、ほんまにええんかいな? なんか師匠と千秋たちだけで抜け駆けしようみたいな気がするんやけどなぁ⛐」

 

 美奈子の『浮遊』の術で断崖絶壁踏破に簡単に成功したものの、千秋は師匠の思いっきり過ぎる行動に、多少のとまどいを感じている様子でいた。だけど、弟子の疑問に対する美奈子の返答は、実にシレッとしたものだった。

 

「これでよろしゅうおまんのや☻ 戦いはあちらの専門の方々はんらにお任せしはって、うちらは海賊が強奪したと言わはる宝を取り戻しに参ることにいたしましょうえ✌」

 

「わくわくぅ♡ もしかしてぇ、そのお宝にぃ、金さんとぉ銀さんとぉダイヤモンドさんがぁあればぁいいですねえぇぇぇ♡ 美奈子ちゃぁぁぁん♡」

 

 姉に比べて妹の千夏は、早くもウカレ気分の極致にいた。またこの気分模様は、師匠もだいたい同じ感じであった。

 

「もちろんでおます☆ そいがうちらの真の目的なんやさかいに✋」

 

 これはまた、本音を堂々と述べたものである。とにかく三人は、月明かりのわずかな光の下、見張りのために建てられていると思わしき櫓らしい建物の外に、遥か崖下まで通じていそうな階段を見つけ出した。

 

 これは暗視力も抜群に優れている、千秋と千夏姉妹の大手柄であった。

 

「師匠、こっちに下まで降りれそうな道があるで☟」

 

「これはようけ、ちょうどええ道がありますもんやなぁ☀ 幸い邪魔もおらへんようやし、この道を使わさせてもらいましょうえ♡」

 

「はいですうぅぅぅ♡」

 

 邪魔がいれば、遠慮なく攻撃魔術で吹っ飛ばすつもりでいた。しかし無ければ無いで、それに越したことはなかった。

 

 美奈子と千秋と千夏の三人は悠々と、崖下にある海賊たちの根城に、一歩一歩と近づいていった。


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