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『剣遊記\』

第五章 瀬戸内海敵前上陸戦!

     (11)

「どけどけどけどくったぁーーい!」

 

 この戦いの勢いがどちらにあるかは、もはや誰の目にも明白中の明白だった。

 

 帆柱が荒馬の俊足で海賊どものド真ん中に躍り込み、手向かう者を自慢の槍術で蹴散らせば、そのあとから孝治と正男が、それぞれ剣と牙とを振りまくる。

 

 対する海賊集団は、完全に浮き足立ちそのもの。ただひとつだけ、彼らの有利を特筆するとすれば、それは多人数による力押しでしかなかった。

 

「こんの野郎ぉーーっ!」

 

「ひいっ! ま、参ったぁ!」

 

 孝治の剣のたった一撃で、頭に鉄カブトをかぶったリザードマン{爬虫人}の海賊が、中型剣を足元にカチンと落とし、両手を上げて降参した。

 

「ちぇっ! 大介とはドエラい違いっちゃねぇ☠」

 

 知り合いであるリザードマンとのあまりの落差で、孝治は思わず舌打ちをした。しかしこの間にも、海賊どもがあとからあとから、わらわらと押し寄せる。

 

「がるるるるるるぅぅぅぅぅぅ!」

 

 その海賊たちに、正男が牙を剥いて飛びかかる。

 

 孝治は思った。

 

「こげん言うたらなんやけど、正男っち人間でおるときゃ極めてふつうなんに、狼🐺に変わったとたん、性格がすっごう攻撃的になるっちゃねぇ♋」

 

 そんな孝治には関係なし。正男の牙が、縞模様のシャツを着た海賊が持つ棍棒を、バキッと見事に噛み割った。

 

「ひえぇぇぇっぇぇぇ!」

 

 真にもって情けない話。男はその場にて、じゃあぁぁぁ……と失禁した。


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