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『剣遊記\』

第五章 瀬戸内海敵前上陸戦!

     (10)

 浜で突如開始された戦闘は、海賊首領である馬図亀の耳にも、すぐに届けられていた。

 

「なんやてぇーーっ! いきなり敵が攻めてきたやとぉーーっ! まさか海上衛兵隊の連中かぁ!」

 

「い、いえっ! そぎゃんようでもないようでごわんど……☁」

 

 報告をする美蝿の口も、どこかもどかしげな感じでいた。

 

「れ、連絡によったら、今までうんだもしたんこつなかケンタウロスに狼に……それと人間のおごじょ戦士らしかでごわす……それに正体不明なんがおるらしゅうて……あっと、これはずんばい重大なこつでごわんど、船までが次々沈められとうとですと!」

 

「な、なんやてぇーーっ! おごじょやったら女の戦士やないかぁーーっ!」

 

 おごじょ――女戦士の単語が美蝿の口から出たとたん、馬図亀が座っている首領椅子から、一気に天井まで飛び上がった。座ったままの体勢で、実に器用な男である。

 

 さらに、もともと青い半魚人の顔色のせいもあるが、今はその青にもっと拍車がかかった状態。縦線までもが、何十本も顔面を走っていた。

 

「ま、まさか……沖縄からほんまにあの女子{おなご}が俺を追ってきたんやあるめえなぁ!」

 

 狼狽しきっている首領の前で、美蝿が慌て気味に頭を横に振った。

 

「い、いかなこ、そ、それごつないと……思いごわんど☢」

 

「えーーい! とにかく俺も現場に行ったるわぁーーっ!」

 

 馬図亀がそばに用意してあった大剣を右手に取り、自ら進んで戦闘地へと向かった。

 

 もちろん首領が行くともなれば、部下も従わなければならない。美蝿は半分嫌々の気持ちながら、やはり愛用の中型剣を腰に提げ、馬図亀のあとを慌てて追い駆けた。

 

「しゅ、首領ぉ! ほんのこて待ってでやいもーすー!」


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