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『剣遊記14』

第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。

     (8)

 こんなふたり(荒生田と裕志)のうしろから、孝治と友美もついていった。裕志みたいにエリ首をつかまれる強引さからは一応解放されているのだが、もはや孝治は、あきらめに近い心境でいた。

 

友美もそのような孝治に、同情でもって付き合ってくれているのだろう。そんなふたり(孝治と友美)がついて来ている様子は、たぶん荒生田にもわかっているに違いない(孝治の心境までは絶対に察してくれそうもないが☠)。だけど、幽霊の涼子に関しては、先輩はいまだにわかっちょらんやろうねぇ――と、孝治はなんだか『ざまあみろ☻』の気分になって考えた。

 

その幽霊涼子と友美が、小さな声で会話をしていた。孝治はそれに気づいても黙っていた。当然鈍感な荒生田は無反応だろうけど、万一幽霊の存在がバレるかもしれない事態に備えて――であった。

 

「ふたりとも、あんまし大きな声ば出さんようにしてや

 

 友美と涼子も小声で返してきた。声バレの心配がない涼子も、それなりに気をつかっているみたいだ。

 

「わかっちょうって、しょんなかやねぇ☻ それに涼子の声やったら聞こえんのやけ、そげん心配せんかてよかろうも☛」

 

『そうっちゃね☻ それはまあ、いつものワンパターンなんやけ置いちょいて、なんならあたし、また照明になってもよかっちゃけど

 

「あの照明けぇ……うん、そうっちゃね♠」

 

 涼子の提案に、孝治は前向きな気持ちになってうなずいた。さらに言えば友美も、二度目の苦笑混じりな顔になっていた。

 

「バレなけりゃ、わたしも賛成っちゃね♡」

 

 ちなみに涼子の言う『照明』とは、ずっと前にも披露されているのだが、彼女自身が幽体を丸く凝縮させて、オーラ状の発光球体――いわゆるウィル・オー・ウィスプに変形する離れ技である。

 

 無論いざというときにはなかなか便利で重宝もの――なので、孝治と同じく友美も、この提案にコクリとうなずいた。

 

「まあ、またわたしの魔術って、ごまかしておくっちゃけどね☆」

 

 これにて暗い洞窟内における照明問題は解決。ところが涼子が技を披露するよりも早く、洞窟にメンバーが集結した。

 

「ほほう、これが裕志はんから連絡のあった、謎の洞窟ってもんでおますんやなぁ

 

「テレパシーとやらで教えてくれておおきにがやぁ☀ これは調査しがいがあると言うもんだがねぇ☀☀」

 

「ハイ、博士ノオッシャラレルトオリナンダナ。タダボクニハ裕志サンノてれぱしートイウノガ全然聞コエナカッタンダケドナ」

 

「うわっち! もう全員そろったとね♋」

 

 まさに孝治の予想以上の素早さ。この速さで二島、日明、徹哉の三人が顔をそろえ、洞窟内を先行していた孝治たちに、速攻で追いついてきた。


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