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『剣遊記14』

第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。

     (7)

「ゆおーーっし! ズンズン中に入るばぁーーい☆」

 

「うわっち! やっぱ無謀の典型ばい、先輩はぁ!」

 

 荒生田は孝治をつかんだまま、言葉どおりにズンズンと、暗い洞窟内に足を踏み入れようとした――のだが、その直前になぜか、急に歩みを停めた。それから裕志に顔を向けた。

 

「おっと、こげな話の急展開は、オレたちだけでドキュメンタリーばしたらいけんちゃね☓ 裕志、日明博士やら二島さんにも連絡ば取りんしゃい☞」

 

「は、はい……☁」

 

 先輩からほとんどの強制で命じられ、裕志が早口で呪文を唱えた。

 

「これって以心伝心の術っちゃね✍」

 

 同業の魔術師である友美が解説をしてくれた。

 

「遠くにいる人の心にこちらから信号ば送って連絡を伝える、まあ簡単な魔術っちゃね☎ この魔術の利点っちゅうたら、連絡される相手に魔術の力がなくても、勝手に意思ば送れるっちゅうことやけどね

 

 孝治もふんふんとうなずいた。

 

「なるほどっちゃねぇ★ でもそれって、送られる側の迷惑ば、いっちょも考えちょらんっちゅうことにならんとやろっかねぇ☻」

 

「それがまあ、欠点ちゅうたら欠点なんよねぇ

 

 友美もふふんと苦笑した。そんな孝治の、よけいな気遣いをしているうちだった。裕志の魔術がいったん終了した模様。呪文を止めて、ほっとひと息を繰り返していた。その次の展開は荒生田が見せてくれた、恐れもためらいも、それこそまるで皆無の傲慢ぶりといえた。

 

「ゆおーーっし! 洞窟探検に出発っちゃけぇ

 

「わわっ! せ、先輩! そげんエリば引っ張らんでもよかですっちゃよぉ!」

 

 荒生田は今度は、かなりためらい気味である裕志の黒衣のうしろエリ首を、右手で強引につかんでいた。これではヘタに逆らえば、たちまち首絞めの状態となる有様だった。しかも荒生田は、日明たちや二島の到着を待たずして、勝手に洞窟へ入る気満々のようだ。


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