『剣遊記14』 第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。 (6) けっきょく孝治たちの行動は、勝手に変更された格好。孝治たち一行は荒生田と裕志のコンビを加えて、総勢五人の顔ぶれとなった(幽霊含む)。
でもって始まる愚かな所業が、荒生田の孝治に対するセクハラ攻撃。
「先輩……おれの肩に手ぇかけるんは、やめてくれませんけ☠」
「ぬぁ〜に、なんも気にせんでよか☻ これは先輩と後輩のごくふつうなスキンシップなんやけな☺☻」
などといつものパターンである妄言をぬかしながら、荒生田は孝治の胸やらお尻の部分を、先ほどからペタペタと両手で扱い回していた。
はっきりと言って不愉快であった。だけれど右横にいる友美と涼子は、くすくすと微笑んでいるだけ。裕志はわざと先頭を進んで、けっきょくは見て見ぬふり。それでも孝治は、いつものとおりの逆襲に、いつ転じてやろうかと手ぐすねを引いていた。
その矢先だった。この危ないふたり(孝治と荒生田)の前を歩いている裕志が、急に前方を右手で指差した。
「せ、先輩……道ん先になんかエズそうな洞窟がありますっちゃよ☜」
簡単ながらに状況を説明しよう。孝治たちのいる現在地は、池田湖からかなり遠くに離れている、開聞岳に近い林の中である――と言っても、開聞岳は薩摩富士の別名があるとおり、円錐形の美しい山容をしているし、実際に噴火歴のある活火山なのだ。従って昔の爆発でできたらしい熔岩の跡があちらこちらに痕跡として残り、今裕志が見つけたような洞窟などが、森の所々に点在していた。
いわゆる富士の風穴のような感じ。この洞窟も、無数にあるその内のひとつなのであろう。
「じゃあ、他ば行きましょっかね⛐」
ある意味ありふれている話の展開に危機感を抱いた孝治は、クルリと洞窟に背中を向けた。
「待ちんしゃい⚠」
その孝治の着ている軽装鎧のうしろのエリ部分を、荒生田が左手を伸ばして、ガッチリとつかんでくれた。
それからヌケヌケと言った。
「こげな謎風な洞窟ば見つけたら、必ず探検に入る✊ これは全世界の探検隊の鉄則やろうも✎」
「そげな鉄則、いったいいつ誰が決めたとですか!」
「たった今、オレがったい✌」
孝治の叫びも無駄だった。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |