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『剣遊記14』

第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。

     (4)

 それこそよく考えてみたら前述のとおり、もう何回も、宿屋のある街と池田湖の間を、凝りもせずに往復したものやら。そのような苦い思いを感じつつだった。孝治は友美と涼子をいっしょに連れて、問題である池田湖周辺を歩き回っていた。

 

 湖岸を適当に散策していれば、きっとなにか(運が良けりゃ✌)モンスターの痕跡でもある――だろう。これは根拠の薄い期待話なのだが、まあ探検隊の定番でもあるので。

 

「なんち言い訳はこんくらいにして、ここまで来たことやし、いっちょ遊んで行こっかね★」

 

 孝治は不真面目気分で付近をキョロキョロと見回してから、友美と涼子相手にささやいた。なにしろ急きょ編成した探検隊とやらは、それぞれ班に分かれたかたち。孝治は友美、涼子との三人組。裕志は孝治と組みたかったようなのだが、けっきょく荒生田先輩に捕まって、いつものペアにされていた。また同じような感じ――というか、これ以外には考えられない組み合わせで、日明と徹哉もコンビになっていた。従ってこのメンバーの中での単独行動は、吟遊詩人の二島だけだった。

 

 その辺の事情はまあ置いて、友美が早速、孝治にきつい一発をお見舞いしてくれた。

 

「けっきょくいつもんどおり、さぼり癖が出ただけとちゃう☻」

 

 こちらもまさしくのふだんどおり。

 

「うわっち! 痛いとこば突いてくれるっちゃねぇ☻」

 

 これはやられたっちゃ――の思いとなった孝治に、泣きっツラに蜂なのだろう。今度は涼子までがツッコミを入れてくれた。

 

『そげん言うたら孝治っち、ここんとこ大した冒険しちょらんけねぇ☹ ちょっと体ばなまっちょるんとちゃう?』

 

「うわっち! そげん言うたらそうかもねぇ……♋」

 

 涼子の指摘も痛かった。ついでに言われてみれば確かに――だった。しばらく孝治にとっての太平の世が続いたので、我ながら直感とイマジネーションとかがにぶっていたりして。

 

 だがその直感とイマジネーションは、孝治自身で思うほど、そんなに衰えてはいなかった。

 

「誰ね!」

 

 このときなにかにピンときた。孝治はすぐに、足元に転がっていた握りこぶし大の石ころを、思いっきりの力を込めて右足でドカンと蹴とばした。


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