『剣遊記14』 第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。 (22) やがて三人(孝治、友美、涼子)は天井のある地底湖から、洞窟のような水中空間を泳ぎ抜け、本当の外洋に出た感じとなった。その証明に今度こそ、本当の海の魚たちが、それこそ瞳の前で何千何万とも言えそうな大群を作って遊泳していた。
(日明さんが言うたこつ、当たっとったばい♋ ほんなこつ海と繋がっとったんやけ♐)
孝治は海中の前後左右をキョロキョロと見回しながら、頭の中でつぶやいた。しかし、確かに地底湖が海と繋がっている事実がこれで証明されたわけだが、孝治はもっと本質的な疑問にも、再びぶつかるような思いになってきた。
(もっとも地底湖の秘密っちゅうたかて、よう考えてみれば池田湖のモンスターとは、まだまだいっちょも関係ないような気もするっちゃねぇ✄ これが池田湖の湖底にも、やっぱり海と繋がる海底洞窟があるっちゅうんやったら、また話は別なんやけどね⚠)
と、そこまで考えて、孝治はうしろに振り返った。背後には友美の変身中であるバンドウイルカが、今も愛嬌のある感じで付き従っていた。もしもこれが本当に野生のイルカであったら、孝治はそのあまりの可愛らしさに引き寄せられ、もしかしてこのままひしっと抱きついているところかもしれない。
いくらなんでも友美相手にそれはできないが、孝治の腹は別方面で決まっていた。
(もう帰るばい⛴ これ以上水ん中ばおったかて、なんの収穫もなさそうやし✄)
孝治は早速イルカ変身中の友美に向け、元来た方向に、再度右手の人差し指を伸ばしてやった。
先ほど通った洞窟に向けて。
これに友美もすぐ理解をしてくれたらしく、流線型の体全体を翻し、元の洞窟の方向にイルカの口先を変えてくれた。
(先輩の命令とは言え、単なる海底散歩やったっちゃねぇ☢ ほんなこつ得したのか損したのか、いっちょもわからん感じっちゃけど✋✊)
これで地上に戻ったら、得たモンはなんもなかったですよ――と、孝治は荒生田に、思いっきりの文句を言ってやるつもりだった。
そんな孝治の右足に、なにかニュルリとしたモノが、いきなりグルグルと巻き付いた。
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