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『剣遊記14』

第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。

     (2)

 徹哉の証言とやらによれば、重大事が起きた時刻は、まさに孝治たち全員、池田湖から離れてすぐだったらしい。

 

 池田湖をバカ正直に監視していた徹哉の目の前。突如湖面からジャバジャバと水柱が噴き出し、波を割って巨大ななにかが姿を現わした――と言う。

 

「おおっ! 龍神様がられたぞぉ(鹿児島弁で『お怒りじゃあ』)!」

 

 通りすがりの土地の古老の叫び。いつどこから急に登場したかについては、もう聞かないようにする。

 

「ソノもんすたーハ、マルデ海坊主ノヨウデシタナンダナ。湖ノ中カラ大キナ頭ガ、マルデ入道雲ミタイダッタンダナ。ソノトキボクハ、情報分析ヲシタンダナ。アノ世ニモ恐ルベキアノ姿ト形状、ドコカデでーたニ蓄積シタ記録ガアッタミタイナンダナ、ト。ソウナンダナ、アレハ前世紀ノ恐竜ノ形状ニ、トテモヨク似テルンダナ、ト、ナンダナ」

 

「言いようことが、いっちょもわからんばい?」

 

 孝治には非常にちんぷんかんぷんな、徹哉の証言口調であった。

 

「要するに徹哉は夜中、この池田湖から急に出てきたモンスターば見て、ビックラこいて気絶しとったっちゅうこっちゃね☞ まあ命だけでも助かって、ほんなこつ良かったっち言うべきやろうねぇ☻」

 

「イエ、生物学的休眠状態デハナクテ、機能停止しすてむガ作動シタンダナ」

 

「それがわからんっちゅうと!」

 

「おーーい! 孝治ぃ!」

 

 つい癇癪を爆発させた孝治の背中から、荒生田が高い声をかけてきた。

 

「……なんすか? 先輩☠」

 

 嫌な予感は初めっからだった。それでも孝治はその思いを顔に出さないようにして、うしろに振り返った。

 

「おまえ、水ん中に潜れ☛」

 

「うわっち!」


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