『剣遊記14』 第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。 (19) やがて呪文を終わらせた友美が、ジャブっと頭まで水中に身を潜らせた。
「うわっち! 友美っ!」
孝治は思わず声を上げた。ところがこれが返事の代わりなのか、なんと友美が消えた辺りの水面が、いきなりピカッと発光したではないか。
「うわっち!」
『ようわからんちゃけど、どうやら変身完了の合図みたいな感じやね♐ ほら、美奈子さんかて変身のとき、体がよう光ったやない✍』
宙に浮かんでいる発光球スタイルの涼子のほうが、孝治よりも冷静な感じでいた。
「そげん言うたかてぇ……早よ上がってこんと……なんちゅうたかて変身初体験やけねぇ☢」
などと、少し心配になってきた孝治の前だった。地底湖の水面が突如バシャッと割れ、人とは違う生き物が浮上した。
「うわっち!」
孝治は水面から真っ裸のまま、洞窟の天井近くまで飛び上がった。
『凄かっ! いきなりジャンプは孝治の得意技やけど、水面から飛び上がったんば初めて見たんは、きょうが初めてっちゃよ☀』
涼子がどうでも良い賛辞を贈ってくれた。それはとにかく、水面にジャバンと落ちた孝治の前で姿を現わしたモノは、全体が灰色をした(腹部は白いようだ)、鼻先のとがった魚――いやいやそうではない。それは誰もがよく知っている、海棲の哺乳類だった。
しかも背中には三角形の背ビレがそそり立ち、全体が見事なほどに美しい流線型。おまけに時々チラリと見える瞳は、実に愛くるしい光を宿していた。
『友美ちゃん……これって……☞』
友美が変身したに違いない生物について、涼子は一応知っているようだった。無論孝治の知識にも、それなりに記憶されていた。
「りょ、涼子も……やっぱりわかるんけぇ☛ おれも実はそうなんやけどね☻」
孝治は瞳の前の生物が友美の変身だとわかっているので、その点での驚きは、もう収まっていた。
「これっち、おれかてだいたいわかるような魚……やない動物っちゃけど、まさか友美がイルカになるなんちねぇ……♋」 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |