『剣遊記14』 第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。 (17) 「……と、ここで一応ストップっちゃね♡」
それでもさすがに恥じらいを感じたのだろうか。上下の下着(ブラジャーとパンティーのみ)になったところで、友美が脱衣を中断した。孝治も思わずツバをゴクリと飲んだのだが、それなりに色気を感じさせる、友美の下着姿であった。ただし胸の大きさは今でもおれんほうが勝っちょうとは、絶対に言わないほうが賢明だろう。
「まずはわたしの魔術の二重化が先っちゃね♐♥」
友美自身は胸の話題など関心ないのか――いや、もしかして触れないようにしているのかもしれないけれど、はた目で見る限りでは、彼女の本心はわからなかった。それよりも洞窟の地面に置いた軽装鎧の懐に、ゴソゴソと右手を入れていた。
孝治もだんだんと、興味がさらに湧くような気持ちになってきた。
「なんか話がピンとこんのやけど、とにかく友美も美奈子さん並みってことっちゃね✌ で、友美はどげんして、二重魔術ば使うつもりけ? 美奈子さんから習ろうたっちゅうたかて、おれは初めて見るっちゃけね☛」
「ほんなこつ簡単ちゃよ♡」
なぜかあっけらかんと言ってくれる友美が鎧の懐から取り出した物は、小さなコンパクトの折り畳み式手鏡だった。
『なんね? 友美ちゃんがいつも化粧に使こうとるモンやない、それ☞』
光り輝きつつ上から見ている涼子も、興味丸出しの声を続けていた。これに応える感じで、友美がニコッと微笑んだ。
「これも美奈子さんから教えてもろうたことなんやけど、二重魔術の初心者は、やっぱり鏡の手助けば借りたほうがええんやて⛽ 美奈子さんは鏡なしでも二重魔術ば使えるほど上達しとんのやけど、わたしみたいな初体験者は、なんでもええから鏡ば使こうたほうがうまくいくそうやけ⛲ つまり鏡に自分の魔力ばコピーさせれば、同時に違う魔術ば使えるようになるってわけらしいんやけどね☣」
「う〜ん、なんとのうわかるようなわからんような……まあとにかく早よ実践してみせりや✊」
「うん♪」
半信半疑の思いを隠せないまま、孝治は友美に魔術の実行を勧めてみた。すると友美は、今度はいかにも調子の良さそうな笑みを返してから、コンパクトの鏡を両手でパカッと開いた。それから鏡に映っている自分の顔に向け、孝治も初めて聞く新しい呪文を唱え始めた。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |