『剣遊記14』 第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。 (16) 一応邪魔者は、ひとり残らず消えた格好。残りは友美だけになっていた。
「服脱ぐんば手伝ってくれたら、友美はここで待っちょってや⛑」
孝治は友美から、水中呼吸の術をかけてもらうつもりでいた。これも以前にお世話になった魔術であるが、水の中で活動するときに、なかなか便利な魔術なのだ。
ところが友美が戻してくれた返事は、孝治にとって、かなりに意外なセリフだった。
「大丈夫☀ きょうはわたしもついて行くけ⛴」
「うわっち?」
『友美ちゃん、それってマジ?』
孝治だけではなく、発光球姿でいる涼子も、驚いた感じの声を出した。
これに友美が答えてくれた。
「うん、いつも孝治と涼子ばっかし危険な所に行かせてばっかしやけ、たまにはわたしが近い場所から援護ばしてやらんといけんけね⛽✋ わたしかてあれからけっこう魔術が上達したんやけ、きょうはそればお披露目してみせるっちゃ✌」
「魔術が上達したんけ☞ それって誰に習ったと? それってもしかしてぇ……♋」
なにやら自信満々げである友美に、孝治も興味の瞳を向けてみた。なんとなくわかっているつもりであるが、返答は思ったとおりのモノだった。
「うん、美奈子さんから二重魔術のかけ方ば、この前習ったと✌ 思うとったより簡単やったっちゃねぇ✌✌」
「やっぱ美奈子さんけぇ☆」
それならば孝治も納得と言ったところ。しかし、それ以前に――いやいや、けっこう切実な事態もありそうに、孝治は思えた。
「やったらおれに魔術ばかけながら、友美も水中で呼吸できるっちことやけど、水着はどげんするとや? おれは元々裸んつもりやけど、友美はそうはいかんやろ?♋」
友美の返事は早かった。
「それも大丈夫っちゃよ♪ 美奈子さんの真似するつもりやけ♡」
これも孝治の頭に、すぐにピン💡ときた。
「うわっち! それじゃ友美も、とうとう変身魔術ば使うつもりけ!?」
「そんとおり☀」
友美が孝治に応え、右目をウインクしてくれたとたんだった。彼女はなにもためらう素振りを見せないで、勢いよく着ている衣服(孝治と同じで軽装鎧姿)をパタパタと脱ぎ始めた。
『なんが友美ちゃんば、こげん性格に変えたとやろっか?』
発光球から響く涼子の声音にも、充分以上と言えるほどの驚き色が混じっていた。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |