『剣遊記14』 第三章 行け行け! 荒生田和志探検隊。 (15) 孝治は初め、なんだか信じられない思いがしていた。だけども理由は、簡単過ぎていた。
「オ、オレは駄目っちゃね⚠ オレがカナヅチっちゅうこつ、もう孝治かて知っとろうも♐☠ それにオレは地上に残って、みんなの安全ば守る義務があるっちゃけな⛔」
つまり孝治のヌードよりも、水に対する恐怖心のほうが上回るらしい。
「すっげえ自分勝手っちゃねぇ☃ じゃあ、徹哉はどげんや?」
続いて孝治は、ポカン顔のままでいる、徹哉に目線を変えた。ところが徹哉本人がなにも答えないうちから、日明が孝治の前にしゃしゃり出た。
「このうわたくしが何べんも言うたがね♨ この地底湖の水は海と繋がっとうがやと☢ だからいくらあすんどるからと言うて、徹哉クンを塩水の中に泳ぎに出すと、おどけるほどおうじょうこくことになるんだがやぁ!」
徹哉もいっしょになってうなずいた。
「残念ナンダケド、博士ノオッシャラレルトオリナンダナ」
「言いようことがさっぱりなんやけど、候補から外せっちゅうことやね☁」
こりゃあかん――と、孝治はキッパリあきらめた。無論日明本人など、初めっから眼中の外であるのだが。
さらに二島にも瞳を向けてみるのだが、彼は彼で、現在多忙中の身であるようだ。
「いよいよ孝治隊員はんの決死の冒険が、今、火蓋を切って落とされようとしてはるようでありまんのや☂ 謎の新発見の地底湖には、いったいいかなる秘密が隠されてはるのか⚠ すべての期待は孝治隊員はんの双肩にかかってはる、そない言うても決して大袈裟やあらへん、と私は思いまんがな✐✑」
「充分以上に大袈裟っちゃねぇ♐」
これはもはや、相手にしても無駄であろう。でもってお終いは、当然に裕志。
「ぼ、ぼくが行くのぉ……☁」
涼子の霊光に照らされている裕志の顔は、青白い以上に蒼白の状態となっていた。
もちろん孝治は、速攻であきらめた。
「もうよかですっちゃよ☢ おれひとりで水ん中ば見てきますけ☛ そん代わり、こん光ばいっしょに持って行きますけね⚠⛑」
仲間を当てにする考えを放棄した孝治は、頭上に浮かぶ涼子変身である発光球を、右手で指差した。実際涼子の霊光であれば水中でも発光可能であるし、ここにそろっている役立たずどもよりは彼女のほうが、よほど頼りになる存在とも言えるからだ。
「そやけど、ここが暗うなって……☁」
なおもわがままばかり言い張る荒生田を、孝治はきつい目線でギラリとにらんでやった。
「よ、よか……オレが許可する⚠☠」
効果は予想以上にテキメンだった。
「じゃあ、鎧と服ば脱ぎますんで、みんなこっから出てってほしいっちゃ♐」
なんだか孝治自身も、いつの間にかやる気になっていた。
「う、うん……☁」
すぐに裕志が一番となって、洞窟から慌てて外に出た。
「結果を楽しみにしとるがや☺」
変人である日明は意外にも、孝治の裸には興味が無い感じでいた。
「我々は孝治隊員はんの意向に従って、現場から一時的に離れることにいたします☛ それでは孝治はん、御無事でおってやぁ♪」
二島は二島で、なんだか名残惜しそうな顔をしていた。こちらは荒生田とは違って、顔にスケベの色が皆無なのが救いと言えそうだ。
「二島さんはともかく、日明さんはちょっと、拍子抜けっちゃねぇ♋」
孝治はポツリとつぶやいたが、なんとなくわかる気もしていた。黙って日明のあとについて行く徹哉とて、ずっと以前に天籟寺美奈子{てんらいじ みなこ}のオールヌードと遭遇しておきながら、まったくの無反応と無表情を貫いていたからだ。
もしかして日明と徹哉は、想像以上に似た者同士(堅物――あるいは不感症)だったりして。
でもって最後の問題は当たり前ながら、サングラス😎の先輩であるのだが。
「オレは孝治の出陣ば、しっかりと見届ける義務があるっちゃけね☻」
「目が笑ろうとうばい! こんド変たぁーーい!」
孝治は右足の回し蹴りで、荒生田の後頭部を撃破! 荒生田はそのままビューーンと、洞窟の外まで飛んでいった。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |